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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第二章 樹海の不協和音(ディスコード)

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暴走する融合(フュージョン)㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

「――そのお綺麗な人形のような顔を、千枚通しで二度と元に戻らぬよう、ズタズタに縫い合わせてさしあげますわ。せいぜい、足手まといにならないことね」


「――あんたこそ、その下品な炎で、私の制服の裾を数ミリでも焦がしたら承知せえへんよ。美しくないモノは、たとえ背中を預けとる相手やろうと、その場で即座に浄化(デリート)したるからね」


 最悪の、そしてこの宇宙で最も凶悪な共同戦線(タッグ)が、ここに成立した。

 その瞬間から、戦いの様相が劇的に一変した。


「「はあああああッ!!」」


 二人の少女が、背中合わせのまま、一切のアイコンタクトも合図を交わすこともなく、全く同時に動いた。

 孝子の電光剣が右半円を、赤い混沌の炎で猛烈な勢いと熱量で薙ぎ払う。凉子の電流鞭が左半円を、青い秩序の雷で精密な幾何学模様の軌道を描いて薙ぎ払う。

 赤と青、炎と雷が、二人の周囲で巨大な竜巻のように荒れ狂い、完璧な「死の円陣」を空間に描き出した。意思を持たない少年少女たちがその円に触れたそばから、あるいは業火に灼かれて灰となって吹き飛び、あるいは超高圧電流によって瞬時に細胞の水分を奪われて炭化していく。


「お嬢様! 『虚無』の霧が来やすぜ! 視覚を塞がれます!」


 ガーディが叫ぶ。敵の一部が、自らの肉体を霧状の黒い瘴気へと拡散させ、二人の視覚と聴覚、そして方向感覚を完全に奪おうと全方位から迫り来る。


「下品な霧やね!」


 凉子は、その霧の中心、最もエネルギー濃度の高いコアとなる一点を、移動ラボの亨のナビゲーションを頼りに瞬時に特定すると、ショック棒の出力を最大限界まで引き上げ、その一点へと一直線に突き刺した。


「天の(ケラウノス)、最大出力……ショートせえッ!」


 青白いプラズマが霧を媒体にして一気に伝播し、霧と化していた少年少女たちの魂を、内側から完全に焼き切って強制終了(シャットダウン)する。


『――凉子様、孝子様! 右前方より、『飢餓』の奔流です!』


 通信機から亨の警告が飛ぶ。別のグループが、自らの生体エネルギーを限界まで犠牲にして、黒い生命力吸収の瘴気を、巨大な大蛇のようにうねらせて二人へと放った。触れれば一瞬で干からびる、致死の呪詛。


「美しくありませんこと!」


 孝子は、その後退を許さない黒い奔流の中心へと、自ら狂喜の笑みを浮かべて飛び込んだ。そして、電光剣を奔流そのものに深く、真っ向から突き立てる。


「地獄の(パイロキネシス)! わたくしの極上の苦痛を、存分に味わいなさいな!」


 彼女は、瘴気に含まれる「他者を喰らおうとする」エネルギーを、逆に自らの炎の導火線として利用した。瘴気を地獄の炎の燃料として強制的に着火させ、その流れを逆流させて、放った者たちへと巨大な爆炎として送り返したのだ。


「ギャアアアアッ!」


 瘴気を放っていた者たちが、自らの力に火をつけられ、ミイラのように干からびながら黒焦げになって吹き飛んでいく。

 地獄の混沌が、天の秩序の計算できない死角を補い。

 天の秩序が、地獄の混沌の無駄なエネルギーの浪費を制御する。

 それは本来、この宇宙において決して交わることのない、水と油のような二つの絶対的な(ことわり)であった。だが、今この瞬間だけ、二人の天才的な戦闘センスと、「相手よりも自分の能力の方が上であると証明したい」という強烈な対抗意識――剥き出しのエゴが、その二つの相反する力を、恐るべき効率と美しさで同期させていたのである。


「……素晴らしい。おお、なんて素晴らしいのだ!」


 広場の最奥の祭壇で、キジマが恍惚とした表情で、その殺戮の舞踏会に見入っていた。自らが手塩にかけて育て、洗脳した最高の生体兵器たちが、虫けらのように全滅していくことなど、彼にとっては次なるステージへ進むための、想定内の安上がりなコストに過ぎない。


「なんと美しい……! 混沌と秩序が、これほどまでに完璧な『不協和音(ディスコード)』を奏でるなど……! これこそが、これこそが『神託』の御意志通りだ!」


 キジマは、両手を広げ、巨大な地下要塞の天井を仰ぎ見て、狂信的な歓喜の声を上げた。


「時は、満ちた。見せてやろう。貴様らが無自覚に守ろうとしている、この古き世界の退屈な法則の終焉を!」


 キジマの背後の空間が、メシャァァッという、分厚いガラスが割れるような、あるいは空間そのものが引き裂かれるような嫌な音を立てて激しく歪んだ。

 そこに、二つの途方もなく巨大な、言語を絶する(おぞ)ましい影が実体化した。

 一つは、触れたものの光も、音も、そして存在意義すらも全てをブラックホールのように吸い込む、絶対的な「無」の塊。地獄の番人、『虚無』。

 もう一つは、周囲の空間そのものから、あらゆる生体エネルギーや魔法的エネルギーを際限なく貪り食らう、渦巻く「飢え」の塊。地獄の番人、『飢餓』。


「……お嬢様、いけません! アレは、我々番人の中でも最上位に位置する『概念系』の悪魔! 我らのような物理干渉系とは、格が違いすぎやすぜ!」


 ガーディが、本気の恐怖と戦慄に声を震わせて絶叫した。影であるはずの彼の輪郭が、恐怖でブルブルと波打っている。


「まずは、貴様らのその生意気な『意志』を、無に帰してやろう」


 キジマの目が、もはや人間のものではない、爬虫類のような縦に裂けた瞳孔(どうこう)へと変化し、冷たい光を放った。

 背後に浮かぶ『虚無』の力が、不可視の波動となって、巨大なドーム全体を一瞬にして完全に支配した。


「なっ……!?」


 凉子の膝が、ガクンと折れ、コンクリートの床に無様に崩れ落ちた。


(……なんで、私は……戦っとうの……?)


 彼女の魂の根幹を支えていた、絶対的な「美学」と「秩序」への信念が、急速に、恐ろしいほどのスピードで色褪せていく。


(美しさなんて、所詮は個人の勝手な主観に過ぎへん……。秩序なんて、この広い宇宙から見れば、移ろいゆく砂上の楼閣みたいなもんや……。私が天を捨ててまで、こんな泥まみれの汚い場所で血を流すことに、一体何の意味があるんや……?)


 耳元の通信機から聞こえる亨の必死の呼びかけが、遠く、ただの無意味な電子ノイズのようにしか聞こえない。彼女の美しい指先から力が抜け、固く握りしめていたショック棒が、カラン、と乾いた音を立てて床に転がり落ちた。


「……あら……?」


 孝子もまた、電光剣の赤い炎を消滅させ、その場に操り糸を切られた人形のように力なくへたり込んでいた。


(……なぜ、他人に苦痛を与えたいだなんて、思っていたのかしら……? 痛いのは、わたくしだって嫌ですわ……。誰かを傷つけるのも、憎むのも……もう、ひどく面倒だわ……)


 彼女の魂を激しく突き動かしていた、あの業火のようなサディスティックな「愉悦」と「高慢さ」が、まるで潮が引くように、綺麗に消え失せていく。


(もう、どうでもいいですわ……。疲れましたの……。早く、あの退屈で平凡な横浜の家に帰って、お布団の中で永遠に眠っていたい……)


 彼女の漆黒の瞳から光が失われ、握っていた千枚通しが、指の間から滑り落ちた。

 二人の最強の少女殺し屋が、完全に戦意を喪失した。

 己の存在理由そのものを『虚無』の力に喰われ、ただ呼吸をするだけの無価値な肉の塊へと成り果てようとしていた。


「フフフ……ハハハハハ!」


 キジマの勝利を確信した高笑いが、ドーム内に響き渡る。


「そうだ。それが真理だ。全ては無意味。抵抗など、大いなる意志の前では全くの無意味なのだよ! さあ、その空っぽになった美しい器から、極上のエネルギーを吸い尽くしてやろう!」


 キジマの命令に従い、今度は『飢餓』の力が、無数の真っ黒な泥のような触手となって、無防備な二人の少女へと這い寄り、襲いかかった。


「あ……ぁ……」


「きゃ……っ……」


 二人の身体に黒い触手がドクン、ドクンと脈打ちながら絡みつき、その内側から生命力と異能の力が急速に吸い取られていく。凉子の純白の戦闘スーツの青いライン発光が消え、孝子の陶器のような肌が、みるみるうちに血の気を失い、土気色へと変色していく。

 このままでは、あと数十秒で、二人は完全に生命力を奪い尽くされて絶命する。

 絶対的な死。絶体絶命の、終わりの瞬間。

 だが、その時であった。

『虚無』の力によって、世界の全てが「どうでもよく」なっていたはずの二人の虚ろな瞳が、空間で交差した。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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