表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
序 章 関ヶ原の驟雨(しゅうう)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/67

紅き愉悦㈢

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

「化け物だなんて、ひどく失礼なご挨拶ですわね。せっかくわたくしが、たっぷりとお時間をかけて、あなた方のその薄汚い罪を『懲らしめ』てさしあげておりますのに」


 銃を構えたまま逃げ惑う男の背後に、影から抜け出たように音もなく回り込んだ孝子は、赤い刃を消し、左手に持ち替えた千枚通しを、男の延髄のわずか数ミリ横の隙間へと、正確無比に突き立てた。


「……っ! あ……が……あ……っ!」


 男は悲鳴を上げることもできず、その場に崩れ落ちた。全身の神経を無数の焼け火箸で突き刺されるような苦痛の中、白目を剥いてゆっくりと、しかし確実に死の淵へと引きずり込まれていく。致死量には至らない絶妙な一撃。彼はこの泥の中で、絶望的な痛みに苛まれながら、数時間かけて死の訪れを待つという至高の罰を与えられたのだ。

 東の陣営、本来ならば関東鋭爪会の中核部隊が敵を迎え撃つべく展開していたエリアは、瞬く間に孝子というたった一人の少女によって、異様な「死」と「苦悶」の領域へと変貌していった。

 ある者は胸や腹に細い穴を開けられ、声にならない悲鳴を上げながら激痛に(もだ)え、ジワジワと死んでいく。またある者は、一瞬の赤い閃光に両断され、傷一つないまま魂だけを焼かれる苦痛と共に絶命していた。死体の周囲には血だまりではなく、極度の苦痛によって毛穴から滲み出た体液と脂汗が、冷たい雨水と混じり合って気味の悪い模様を地面に描いている。


「ふふふ……ああ、素晴らしい音色。でも、皆様、トレーニングにしては、少々、張り合いがございませんわね? もっとわたくしを楽しませてくださらないと、すぐに飽きてしまいますわよ」


 阿鼻叫喚の地獄絵図の中心で、孝子は迫りくる男たちを次々と優雅に「懲らしめ」ながら、恍惚(こうこつ)とした笑みを浮かべた。その姿は、凄惨な戦場においてあまりにも美しく、そしてあまりにも異常であった。

 しかし、その時である。彼女の背後に影のように同化して立ち、戦場全体を俯瞰していたガーディの超視力と嗅覚が、この戦場における、ある「異質な光景」を捉え、彼女の網膜と脳髄へと直接その映像と情報を転送してきた。


「……ガーディ。西の方角から、ひどく妙な匂いがいたしますわね。血の匂いでも、雨の匂いでもない……」


 孝子は、迫りくる敵の喉元を千枚通しで軽く抉りながら、鼻先に純白のハンカチを当て、ひどく不快そうに美しい柳眉をひそめた。


「へっ。左様にございます、お嬢様。あれは魂が瞬時に、そして完全に焼却される匂い。しかし、我ら地獄の業火が放つような、苦痛や怨念の入り混じった焦げ臭さとは全く異なる……あまりにも無機質で、不自然なまでに清浄すぎる『秩序』の匂いにございます」


「秩序、ですって? あんな、下品な怒号と銃声が飛び交い、泥にまみれた男たちの戦場に?」


 孝子は、戦闘のステップをピタリと止め、はるか西の陣営――本来ならば関西侠友連合の主力部隊が陣取っているはずのシマを、冷たい瞳で見つめた。

 そこでは、孝子の与える「苦痛」の赤い閃光とは完全に対極をなす、冷たく無機質な「青い稲妻」が、闇夜を切り裂き、瞬く間に組員たちを黒焦げの炭へと変えていた。悲鳴を上げる間も与えない。苦痛を与える時間すら非効率だと断ずるかのような、徹底した「消去」と「浄化」の光。それが、西の陣営を恐るべき速度で蹂躙(じゅうりん)していた。


「恐らくは、天の眷属(けんぞく)。あるいは、それに極めて近しきモノ。地獄(われら)とは対極に位置する、おぞましい存在かと存じます。お嬢様、危険にございます。天の力は、純粋な破壊力と消滅させる力において、我々の『苦痛』を与える力とは次元が異なりますれば。ここは一時、退避を……」


 ガーディの影が、孝子を守るように大きく広がる。だが、孝子はその後ろへ下がることはなかった。


「まあ、天……」


 孝子は、初めてその冷徹な仮面に、少女らしい好奇心と、そして明確な「敵意」の色を色濃く浮かべた。自らが信奉する、じっくりと味わわせる「苦痛の美学」を、一瞬の「消去」で台無しにするような、あの青い光。それが無性に彼女の(かん)に障ったのだ。


「わたくしのお稽古相手に、相応しいかもしれませんわね。あの不躾でつまらない青い光の主と、一度、お手合わせ願いたいものですわ」


「お嬢様、なりませぬ!」


「あら、怖じ気付きましたの? ガーディ」


 孝子は、右手の電光剣の炎をさらに赤く、強く燃え上がらせながら、銀の鈴を転がすようにくすくすと笑った。


「大丈夫ですわ。わたくしの『針』の前では、天使であろうと神であろうと、ただの惨めな的でしかありませんもの。……次に相まみえることがあれば、あのお高く止まった青い光を、地獄の音色で、たっぷり泣き叫ばせてさしあげますわ」


 関ヶ原の深い闇の中で、東の魔女と西の堕天使は、まだ互いの顔を見ていない。だが、二人は互いの放つ力の残滓(ざんし)を通して、確かに認識していた。この戦場に、自分と同質でありながら、全く相反する正義と美学を持つ常軌を逸した「何か」が存在していることを。

 泥と血にまみれた天下分け目の地で、新たなる混沌の時代を告げる、静かで狂気に満ちたプレリュードが鳴り響いていた。二つの相容れぬ刃が交わる運命の時は、すぐそこまで迫っていた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ