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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第二章 樹海の不協和音(ディスコード)

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狂気の箱舟㈢

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 不意に、ドーム内に設置された巨大なスピーカーから、朗々とした、しかしどこか爬虫類を思わせる冷たく滑るような男の声が響き渡った。

 広場の最奥、一段高くなった祭壇のような場所。そこに、純白のスーツの上に、アルカディア財団の紋章が金糸で刺繍されたローブを羽織った、一人の男が立っていた。

 三十代半ばほどの、神経質そうに痩せこけた男である。だが、その落ち(くぼ)んだ眼窩(がんか)の奥には、常軌を逸した狂信的な光が宿り、彼の全身からは、この巨大な空間を支配するような圧倒的なカリスマ性と、吐き気を催すほどの邪悪な霊力が立ち上っていた。


「なっ……!?」


 孝子と凉子は、同時に息を呑んだ。

 自分たちの正体と異名を、初対面の人間の男に完全に言い当てられたからだ。


「驚くことはありません。貴女方をこの素晴らしき箱舟(アーク)へとお導きしたのは、他でもない、我らが崇拝する大いなる意志……『神託(オラクル)』なのですから」


 男――『アルカディア財団』の指導者にして、自らを“予言者”と名乗るキジマは、両手を広げ、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。


「『神託』は、この腐りきった世界を、古き神々――天界の偽りの愛と、地獄の無意味な苦痛という退屈な支配から完全に解放し、新たなる高次の秩序へと導く、真の『神』。我らアルカディア財団は、その新世界を担う、新たなる人類を創造するための神聖な『箱舟』なのです」


 キジマは、座席に座る無表情な数百人の少年少女たちを、まるで自分の所有する最高の芸術作品でも愛でるかのように、慈愛に満ちた目で見つめた。


「ごらんなさい、この美しい子供たちを。彼らは、古い世界の『愛』だの『情』だのといった、不確かなバグに汚染される前の、純粋で強力な『才能』の結晶です。しかし、彼らの心は(もろ)く、この社会のシステムに適合できずに絶望していた。だからこそ、我々が彼らを『保護』し、不要な感情というノイズを完全に初期化(フォーマット)し、真の理を教育したのです。彼らこそが、新世界を支配する神の軍隊なのです!」


「……狂っとうわね」


 凉子が、氷のように冷たい声で吐き捨てた。


「人間の脳を物理的に弄り回して、感情を強制終了させるなんて、ただの洗脳やん。そんなもん、美しい秩序でも何でもない。ただのプログラムの暴走やわ。即座にデリートせなあかん」


「お遊びが過ぎますわ、ただの人間の分際で」


 孝子も、右手に電光剣のグリップを握りしめ、漆黒の瞳に赤い殺意を燃え上がらせた。


「あなた様のような、大言壮語ばかりを並べ立てる薄汚い詐欺師は、地獄の底でも最も退屈で、苛め甲斐のない『お稽古』の対象ですのよ。さっさとその舌を引っこ抜いて、絶望の味を教えてさしあげますわ」


「フフフ……ハハハハハ!」


 キジマは、二人の少女の圧倒的な殺気を前にしても、その狂信的な笑みを微塵も崩さなかった。


「貴女方の力は、確かに素晴らしい。地獄の混沌と、天の秩序。ですが、どちらもまだ不完全であり、古い世界の枠組みに囚われている。……『神託』は、貴女方に、ここで最終テストを課すとおっしゃっておられました」


「「……ッ!」」


 二人は、互いへの警戒を解かぬまま、キジマの次の言葉を待った。


「貴女方が、本当に新世界にふさわしい『真の力』に至る存在なのか。それとも、所詮は旧世界の残骸として、この場でこの子供たちの糧として『処分』されるべきバグに過ぎないのか、を」


 キジマが、右手の指を高く掲げ、パチン、と大きな音を立てて鳴らした。

 その瞬間であった。


 ゴゴゴゴゴォォォッ!!


 座席に座っていた数百人の少年少女たちが、全くの同時刻、寸分の狂いもない動きで、一斉に立ち上がったのである。

 彼らの光のなかった空虚な瞳に、一斉に、漆黒の、そして極めて戦闘的で狂暴な光が宿った。

 それと同時に、彼らの細い身体から、圧倒的で、そして二人が嫌というほど知っている「おぞましい力」が、黒いオーラとなって噴出し始めたのだ。


「この子たちは、もはやただの人間ではありません」


 キジマは、恍惚として叫んだ。


「彼らは、我ら財団のオーバーテクノロジーと、そして『神託』の力によって、地獄の深淵の力をその身に直接宿した、魂そのものを『最適化』された新たなる戦士たちです! さあ、彼らの圧倒的な力と数の前に、貴女方は自らの美学をどこまで保てるでしょうか!」


『――お嬢様、いけません! あのガキ共の背後に……あの男の背後に渦巻いている黒い影……!』


 ガーディが、通信越しに、これまでにないほど恐慌状態に陥った絶叫を上げた。


『間違いありませぬ! 我が同胞たる地獄の番人……それも、我らのような物理干渉系とは格が違う、概念そのものを喰らう最悪の二柱、『飢餓』と『虚無』の力が、あの男と、あのガキ共に融合しておりまする!』


『凉子様、危険です! 彼らの生体エネルギーの波形が、人間の限界値を遥かに超えて急上昇しています。これは暴走です。三百の地獄の塊が、一斉にこちらへ向かってきます!』


 亨のシステムも、真っ赤な警告音を鳴り響かせていた。


「さあ、始めましょう、美しき異常者たちよ!」


 キジマが、両手を大きく広げ、狂気の指揮者のようにタクトを振るった。


「混沌と秩序の不毛なデュエットか、あるいは、我らが新世界の無慈悲な合唱(コーラス)か! 生き残った方だけが、真の『正義』なのです!」


 ドォォォォォンッ!!


 数百人の、最強の「才能」を持ち、感情を失い、そして地獄の最悪の力をその身に宿した洗脳された少年少女たちが、まるで統率された一つの巨大な漆黒の波となって、二人の少女殺し屋へと、一切の躊躇なく襲いかかってきた。


神託(オラクル)』が仕掛けた、逃げ場のない最悪の遊戯盤の上で。

 地獄の魔女と、天の堕天使、そして洗脳された生体兵器たちの、血で血を洗う絶望的な三つ巴の死闘が、今、狂気の箱舟の中で幕を開けたのであった。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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