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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第二章 樹海の不協和音(ディスコード)

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狂気の箱舟㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 青白い閃光が、狭い通路の中で連続して弾けた。

 ショック棒の先端が、男たちの首筋やこめかみにミリ単位の正確さで触れるたび、致死量の特殊周波数の電流が彼らの脳髄を完全にショートさせる。


「……っ!」


 悲鳴を上げる間もなく、先頭の五人の男たちが、まるで糸を切られた操り人形のように一瞬で白目を剥き、その場に崩れ落ちた。一滴の血も流さず、一切の苦痛の表情も浮かべない、完全なる無機質で論理的な死。


「まあ。なんて味気ないお掃除なのかしら。せっかくの命の終焉(しゅうえん)という最高の舞台を、ただの機械のスイッチのオンオフのように処理してしまうなんて。あなた様には、真の芸術を解する心が致命的に欠如していらっしゃるのね」


 凉子の背後から、心底楽しげな笑い声が響いた。

 孝子である。

 彼女は、残った警備員たちの一人がパニックに陥りながら乱射した弾丸を、ガーディが展開した影の盾で容易く弾き落としながら、ゆっくりと、恐ろしいほどの優雅さで歩み寄ってきた。


「化け物めッ! 死ねェッ!」


 弾切れを起こした別の警備員が、アサルトライフルを投げ捨て、腰のコンバットナイフを引き抜いて孝子へと躍りかかった。


「あらあら、元気な方。そういうの、わたくし、決して嫌いじゃありませんわ」


 孝子は、セーラー服のポケットから氷のように冷たい千枚通しを取り出し、男の力任せに振り下ろすナイフを紙一重で躱すと、その切っ先を男の右肩の関節の隙間へと、サクリ、と優雅に突き立てた。


「……ぁ、がっ!?」


 一瞬の麻痺。だが、その直後、男の右腕の全ての神経が、灼熱の鉄串で貫かれたような絶望的な苦痛に支配された。


「ぎゃあああああああッ!! うでが、腕がァァァァッ!」


 男はナイフを落とし、右腕を抱えてのたうち回り、涙と鼻水を流して絶叫を上げた。


「うふふ、素晴らしい悲鳴ですわ。でも、まだ足りませんの。次は左足、そしてその次は眼球を……」


 孝子は、男の絶叫を極上の交響曲でも聴くかのようにうっとりと目を閉じ、恍惚(こうこつ)とした笑みを浮かべた。


「……ダボが。ええ加減にせえや。反吐が出るわ」


 凉子が、氷のように冷たい声で吐き捨てた。

 彼女は、床でのたうち回る男の頭部に、無造作にショック棒の先端を押し当てた。


 バチッ!


 青白い閃光と共に、男の苦痛の絶叫は一瞬にして完全に途絶え、その巨体はピクリとも動かなくなった。


「なっ……! あなた様、わたくしの極上の芸術作品を、なんてことをしてくださいますの!」


 孝子が、漆黒の瞳に明確な怒りと殺意を宿し、凉子を鋭く睨みつける。


「うるさいわ、地獄のネズミ。あんたの下品で非論理的な悲鳴のオーケストラなんか、聞いてるだけで私の演算に致命的なノイズが走るんや。ここは敵の要塞の中。無駄な苦痛を与えて時間を浪費する行為は、リスクを高めるだけの愚行やんか。……さっさと進むで」


「……本当に、腹立たしい血の通わないお人形ですわね。そのうち、必ずその細い首をへし折ってさしあげますわ」


 互いの戦闘スタイル、すなわち「命を奪うことに対する絶対的な美学」が真っ向から対立する二人は、相手への強烈な殺意と嫌悪感を隠そうともせず、火花を散らすような不協和音を奏でながらも、要塞の奥深くへと進んでいった。

 亨のハッキングが次々と現れる隔壁の電子ロックを無力化し、ガーディの霊的感知が床や壁に仕掛けられた致死的な呪詛の罠を事前に察知し、瘴気で焼き切っていく。

 そして、行く手を阻む武装警備員たちを、凉子が一切の無駄を省いた青い雷で瞬時に「浄化」し、孝子が赤い炎と千枚通しで残酷に「懲らしめる」。

 それは、恐ろしく効率的でありながら、同時に恐ろしく歪んだ、地獄と天界の最悪の協奏曲(アンサンブル)であった。彼らの歩いた後には、黒焦げの死体と、激痛に顔を歪ませたまま硬直した死体だけが、交互に転がっていく。

 やがて四人(二人の少女と、二人のサポート役)は、要塞の最深部、ひときわ重厚な巨大な鉄扉の前にたどり着いた。


『――凉子様。この扉の先、巨大なドーム状の空間が広がっています。内部に数百もの生体反応を検知しました。……ですが、彼らのバイタルサインは、通常の人間のものではありません。極めて特殊で……全員が異常なまでに均一化された波形です。まるで、一つの巨大なプログラムのように』


 亨の警告が響く。


「……数百の均一化された波形。それが、あの『神隠し』で集められた、特異な才能を持つ若者たちの成れの果て、ということやね」


「開けなさい、ガーディ」


「ハッ!」


 ガーディの影の触手が扉の隙間に潜り込み、強引に内部のロック機構を破壊する。

 ズズズズズッ……という地鳴りのような重い音と共に、巨大な扉が左右に開かれた。

 そこに広がっていたのは、旧軍の地下要塞という歴史の遺物にはおよそ似つかわしくない、狂気に満ちた光景であった。

 天井高が数十メートルはある巨大なドーム状の空間。ここは、かつては巨大な兵器や航空機の格納庫であったのだろう。だが今は、最新鋭の音響設備と巨大なモニターが至る所に設置され、カルト宗教の礼拝堂と、近代的な大講堂を不気味に融合させたような、異様な空間へと改装されていた。

 そして、その広大なフロアに規則正しく並べられた座席には、数百人の十代の少年少女たちが、一切の隙間なく整然と座っていたのだ。

 彼らは皆、白い無機質なローブのような制服に身を包んでいた。その中には、ガーディが調査した関東鋭爪会の最高幹部の一人息子も、亨が追っていた関西の某財閥の令嬢の姿も、確かに混じっていた。

 だが、彼らの様子は異常であった。

 数百人いるというのに、誰一人として身動き一つせず、一言も発さない。咳払い一つ聞こえない。全員が、まるで魂を抜き取られた精巧な蝋人形のように、前方の壇上をただじっと虚ろに見つめている。彼らの瞳には、かつて持っていたはずの「心の闇」の葛藤も、「特異な才能」の輝きも、一切の光が宿っていなかった。完全に空虚で、底なしの闇だけが広がっている。


「……なんやの、これ。ごっつい気持ち悪い空間やな。完全に思考回路(システム)を初期化されとんや。美しさの欠片もあらへん」


 凉子が、その異様な光景に、美しい顔を嫌悪で歪めた。


「まあ。自我を完全に破壊されたお人形の群れ。これでは、どんなに痛めつけても極上の悲鳴は奏でてくれませんわね。全く、興ざめなコレクションですこと」


 孝子もまた、つまらなそうに扇子を開き、パタパタとあおいだ。


「――ようこそ、いらっしゃいました。美しき『赤き混沌』の使徒よ、そして『青き秩序』の堕天使よ」

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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