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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第二章 樹海の不協和音(ディスコード)

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狂気の箱舟㈠

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 鬱蒼(うっそう)と生い茂る青木ヶ原樹海の最深部。月光すらも分厚い葉群と呪詛の霧に(さえぎ)られた絶対的な闇の中、地磁気が完全に狂い切った方位磁石の針がグルグルと無意味な回転を続けるその場所に、周囲の自然環境とは明らかに異質な、暴力的なまでの質量を持つ人工物がぽっかりと口を開けていた。

 苔むした岩肌と完全に同化するようにカモフラージュされた、巨大で重厚な鋼鉄の扉。それはかつて、旧日本軍が本土決戦のために秘密裏に建造し、終戦と共に歴史の闇に葬り去られた巨大な地下要塞の入り口であった。だが、現在そこには、軍の遺物には到底見合わない最新鋭の電子ロックパネルと、それ以上に忌まわしい、空間そのものをドロドロに歪ませるほどの高密度な呪詛が何重にも編み込まれていた。


「……亨さん。この下品で分厚い鉄の塊、あんたの計算でどうにかなりまへんの?」


 高清水凉子は、純白の特殊戦闘スーツを樹海の泥や苔で一切汚すことなく、氷のように冷ややかな青い瞳で鋼鉄の扉を見据え、耳元の真珠の通信機へと静かに語りかけた。


『――御意に、凉子様。現在、私の神戸のラボのメインサーバーから、この扉の電子ロックシステムに対して論理的なブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)と、セキュリティホールへのパケット注入を同時に実行中です。……システム自体は非常に高度に暗号化されていますが、私の演算の敵ではありません。あと十秒で、物理的なロックは完全に解除されます。ですが……』


 詫間亨の声には、普段の冷静な執事のような響きの中に、わずかながら緊迫したノイズが混じっていた。


『扉の表面を広範囲に覆っている、あの非論理的な霊的エネルギーの膜。あれは私の論理的なアプローチでは一切干渉不可能です。ロックを解除しても、あの呪詛が残っている限り、扉に物理的に触れた瞬間に、細胞の分子結合を内側から破壊されます』


「まあ、頼りないことですこと。ご自慢の『論理』とやらも、地獄の深淵の力の前ではただの役立たずのガラクタになってしまうようですわね」


 北條孝子が、手にした扇子で口元を隠しながら、これ見よがしに涼やかな声で嘲笑(ちょうしょう)した。濃紺のセーラー服の襟元を不気味な夜風が揺らし、彼女の漆黒の瞳には、相手の無力さをあざ笑う強烈な嗜虐(しぎゃく)の光が宿っている。


「……ダボが。黙っとれや、地獄のネズミ。あんたの下品なオカルト自慢なんか聞きたないわ。さっさとその汚らしい扉の呪詛を、あんたの番犬に喰わせたったらええやんか」


 凉子は、微塵も表情を変えずに、絶対零度の声で振り返りもせずに言い放った。


「あらあら、人に物を頼む時の態度というものを、天界の立派な学校では教わりませんでしたの? ……まあよろしいですわ。こんな所で足止めを食うのは、わたくしにとっても退屈な時間の浪費ですもの。ガーディ」


「へっ。お任せを、お嬢様。あのような人間が小手先で編み上げた呪詛など、地獄の底で数万年煮込まれた怨念に比べれば、ただの甘い綿あめみたいなもんでさァ」


 ガーディの長身痩躯が、孝子の足元の影からズルリと完全に抜け出した。顔の半分を覆う深い影の奥で、凶悪な目がギラリと血の色に光る。

 彼は長い腕を鋼鉄の扉へと伸ばすと、その掌からドロドロとした真っ黒な地獄の瘴気を、滝のように激しく噴出させた。


 ジュウウウゥゥゥッ!!


 ガーディの放つ純粋な地獄の力が扉の表面に触れた瞬間、鋼鉄を覆っていた不可視の呪詛の膜が、まるで断末魔の悲鳴のような金切り声を立てて激しく泡立ち、赤い煙を上げて蒸発し始めた。


『――電子ロックの完全解除、確認しました。今です、凉子様!』


 呪詛の膜が完全に消失したそのコンマ一秒の隙を突き、亨のハッキングによって制御を奪われた重厚なロック機構が、ガシャン、と地下空間に響く重苦しい音を立てて外れる。


「開けなさい、ガーディ」


「ハッ!」


 ガーディが自らの影の触手を扉の隙間に滑り込ませ、強引に力任せにこじ開ける。ギギギギギィィッという、鼓膜を破るような金属の軋み音と共に、数トンの重量を誇る鋼鉄の扉が、ゆっくりと、しかし確実に闇の奥へと開かれていった。

 開かれた扉の向こうに広がっていたのは、冷たい蛍光灯の無機質な光に等間隔に照らし出された、果てしなく続くコンクリートの通路であった。

 外界の雨音も、樹海の不気味なざわめきも、ここでは一切聞こえない。ただ、巨大な換気扇の低い駆動音と、カビと薬品の入り混じったような、酷く人工的で不快な臭いが空間に充満している。


「……お邪魔いたしますわ。極上の悲鳴を奏でる、楽しいお遊戯の始まりですわね」


 孝子が、電光剣の入った黒いアタッシェケースを手に、舞踏会に向かうような弾む足取りで通路へと足を踏み入れた。


「……反吐が出そうやわ。こんな美しくない空間、一秒でも早く一番奥まで突き進んで、バグの根源ごと完全に浄化してやらんと気が済まへん」


 凉子もまた、純白のブーツを静かに鳴らし、一切の感情を排した能面のような顔でその後へと続く。

 二人がコンクリートの通路を数十メートル進んだ時だった。


「侵入者だ! 第一防衛ライン、突破されたぞ! 撃て、撃ち殺せェッ!」


 通路の奥の曲がり角から、完全武装した十数名の警備員たちが一斉に姿を現した。彼らは皆、黒ずくめのタクティカルスーツに身を包み、防弾ヘルメットとゴーグルを装着し、最新鋭のアサルトライフルを構えている。ただのヤクザの護衛ではない。軍隊並みの訓練を受けたプロの傭兵部隊だ。


 タタタタタタタッ!!


 狭い通路の中で、鼓膜を破るような猛烈な発砲音が轟き、無数の鉛の弾丸が二人の少女に向かって文字通り雨あられと殺到する。


「……遅すぎるやん」


 凉子の青い瞳が、伊達眼鏡のディスプレイに流れる弾道予測のデータストリームを瞬時に処理する。

 彼女は、まるで精密に計算された舞踏のステップを踏むように、飛来する弾丸の軌道をミリ単位の身体の傾きと滑らかな動きだけで完璧に(かわ)した。弾丸は彼女の純白のスーツを掠めることすらできず、背後のコンクリートの壁に虚しく着弾して火花を散らす。


「あんたらみたいな、感情任せで引き金を引く乱射するだけの野蛮なバグ。私の秩序(コスモス)の計算をコンマ一秒でも狂わせることすらできへんわ」


 凉子は、スカートのベルトから銀色に冷たく輝くショック棒を抜き放ち、一気に距離を詰めた。

 人間離れした圧倒的な初速。警備員たちがパニックに陥りながら次の引き金を引くよりも早く、凉子は敵の密集陣形の中心へと滑り込み、流れるような連撃を放つ。


 バチッ! バチッ! バチッ!!

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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