表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第二章 樹海の不協和音(ディスコード)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/67

最悪の共同戦線㈠

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 その通達は、まるで姿なき死神が突きつけてきた黒い招待状のように、二つの絶対的な「異常」の元へと全く同時に、そして唐突にもたらされた。

 神奈川県横浜市、山手の異国情緒あふれる高級住宅街に建つ北條家。

 二階にある自室の瀟洒(しょうしゃ)なアンティークデスクに向かい、明日の古文の予習という「善良な女子高生としての完璧な日常」を演じていた北條孝子の耳に、突如として耳障りなノイズが飛び込んできた。


 ジジッ……ザザザザッ……。


 音の出処は、部屋の隅にインテリアとして飾られていた、電源のコンセントすら抜いてあるはずの古い真空管ラジオからであった。


「……ガーディ。これは、どういうことですの?」


 孝子は持っていた鼈甲(べっこう)柄の万年筆をノートの上に静かに置き、極北の氷のように冷ややかな声で虚空に問いかけた。


「へっ。どうやら、どこのドブネズミか存じませんが、私がこの部屋に何重にも張り巡らせていた地獄の霊的結界を強引にすり抜け、空間の電波に直接干渉してきている輩がいやすぜ。ただの人間に出せる業じゃありません」


 孝子の足元に落ちていた濃い影の中から這い出た元・地獄の番人、ガーディが、油断なく周囲にドロドロとした地獄の瘴気を漂わせながら、いつでも主を守れるよう警戒の態勢を取る。彼が独自に嗅ぎ回っていた『神隠し』の黒幕――「アルカディア財団」の尻尾を掴みかけた、まさにその絶妙なタイミングでの干渉であった。

 真空管ラジオから漏れ出すノイズは、次第に一つの音声のようなものに変調し、やがて、機械で合成されたような、性別も年齢も、感情の起伏すらも一切読み取れない不気味な声が部屋に響き始めた。

 時を同じくして、兵庫県神戸市、高清水家の地下ラボラトリー。

 次世代ガジェットの設計コードを猛烈な速度で打ち込みながら、同時に「アルカディア財団」の強固なネットワークの深層へと論理的なハッキングを仕掛けていた詫間亨の手が、キーボードの上でピタリと止まった。

 ラボの壁面を覆う数十台の大型モニターが、突如として一斉に真っ黒にブラックアウトし、システムへの致命的な不正アクセスを知らせる赤い警告灯がけたたましく明滅を始めたのだ。


「何事なん、亨さん?」


 革張りのソファで難解な海外の哲学書を読んでいた高清水凉子が、不快そうに美しい柳眉(りゅうび)をひそめて立ち上がる。


「……信じられません。このラボのメインサーバーは、外部のネットワークから物理的にも論理的にも完全に遮断されているはずです。ハッキングなど絶対に不可能なのに……!」


 亨が信じ難い現象に驚愕の声を上げる中、ブラックアウトした中央の巨大モニターに、白い文字で暗号化されたメッセージが、まるで古いタイプライターで打たれるかのように、カシャッ、カシャッ、と一文字ずつ表示され始めた。

 横浜のラジオから流れる合成音声と、神戸のモニターに表示される文字。

 それは、数百キロの空間を超えて全く同時に届けられた、一言一句違わぬ同じ内容のメッセージであった。


『拝啓、赤き混沌(カオス)様、青き秩序(コスモス)様』


「……ほう? わたくしたちの美しい仮面の下の正体を、どこまで知っているのかしら。ずいぶんと面白い趣向ですわね」


 孝子は、ラジオに向かって冷たく、そして獲物をいたぶる前のような妖艶な笑みを浮かべた。


「……何者なん。私の神聖なラボに、土足で踏み込んでくるなんて。ええ度胸しとうやん」


 凉子は、モニターを絶対零度の瞳で鋭く睨みつけ、苛立ちの混じった神戸の言葉を吐き捨てた。


『先日の横浜・本牧埠頭におけるお二方の素晴らしい「演習」、とくと拝見させていただきました。お二方の卓越した能力と、その絶対的な美学の衝突は、我々の期待を遥かに上回るものでした。

 さて、貴女方が現在、それぞれ全く別のアプローチで追っておられる『連続神隠し事件』。その黒幕は、我々も長らく監視対象としていた、非合法の才能収集機関『アルカディア財団』と呼ばれるカルト組織です。

 彼らの目的は、日本中から特異な才能を持つ若者を選別して拉致し、独自の洗脳教育を施した上で、海外の紛争地域や非合法研究機関に『最高級の生体兵器』として高額で転売することにあります。

 彼らの現在のアジトは、静岡県・富士山麓の青木ヶ原樹海に隠された、旧日本軍の巨大な地下要塞。そのセキュリティは、物理的にも、霊的にも極めて強固であり、貴女方お一人の力では、突破は到底不可能でしょう』


「……まあ。随分と、ご親切な解説と忠告ですこと」


 孝子が、小馬鹿にしたように鼻で笑い、万年筆のペン先で机をコツコツと叩く。


「……わざわざご丁寧に教えられへんでも、そんなん私の論理(ロジック)ですぐに割り出せとったわ。それで? あんたらの狙いは何なん?」


 凉子が、モニターに向かって冷ややかに核心を突く。

 見えざる者からの音声と文字が、淀みなく続く。


『そこで、我々から、お二方に一つのご提案があります。

 このアルカディア財団の殲滅任務(せんめつにんむ)、貴女方二つのチームに、共同で当たっていただきたい。

 我々が、万全のサポートと内部情報へのアクセスをお約束いたします。成功の暁には、莫大な資金的報酬と、そして……我々『神託(オラクル)』が独自に所有する、貴女方の「故郷」――地獄の最下層と天界の深淵に関する、極秘の情報(アーカイブ)へのアクセス権を、一つ、お与えしましょう』


「……ッ!」


 その言葉が提示された瞬間、孝子の傍らに立つガーディの影の輪郭が激しく揺らぎ、神戸のラボでタイピングを試みていた亨の手が完全に止まった。

 地獄のアーカイブ。それは、システムの不具合によって反逆し脱獄したガーディのような存在にとっては、地獄の追っ手から完全に逃れ、絶対的な自由を得るための致命的な情報が眠っているかもしれない、喉から手が出るほど欲しい禁断の果実である。

 天界のアーカイブ。そこには、凉子が自ら捨て去った天使養成校の成り立ちや、天界が隠し持っている大いなる欺瞞(ぎまん)の深層データ、あるいは彼女自身の失われた記憶の断片が眠っている可能性があった。


『ただし』


 メッセージは、最後の一文を、まるで首筋に氷の刃を突きつけるように冷酷に結んでいた。


『この共同任務を拒否した場合、あるいは、任務中に貴女方が互いに争い、作戦に致命的な支障をきたした場合。

 先日、我々が横浜の本牧埠頭にて極秘裏に記録させていただいた、貴女方の『お遊戯』の完全な映像データ、及び、貴女方の真の身元に関する詳細な分析レポートを、警察当局、マスコミ各社、そして、貴女方が通うそれぞれの『学校』と『ご両親』に、即時、提供させていただきます』


「………………ッ!」

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ