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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第二章 樹海の不協和音(ディスコード)

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仕組まれた神隠し㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

「ええ。しかも、消えたのはその幹部の息子だけじゃねえ。私が裏のルートで情報を掻き集めたところ、この数週間の間に、横浜、川崎、東京の各所で、全く同じような手口で、十代の若者たちが二十名以上も行方不明になっているんでさァ。警察の無能どもは、ただの『集団家出』として処理しようとしていやがるようですがね」


「ただの家出が、二十名も同時に起きるわけがありませんわ。……その消えた若者たちに、何か共通点はありまして?」


 ガーディは、自らの影から一枚の黒いファイルを取り出し、孝子のテーブルへと差し出した。


「そこが、一番引っかかるんでさァ。消えたガキ共に共通しているのは、全員が『極めて優秀な学業成績』、あるいは『音楽や美術、スポーツにおける特異な才能』を持っているということ。……そしてもう一つ。彼らは皆、表向きは裕福で恵まれた家庭に育ちながら、その内面に、親への反発や、社会への不適合といった『深い心の闇』を抱え込んでいた、という事実ですぜ」


「才能と、心の闇……」


 孝子は、ファイルをパラパラと捲りながら、美しい唇を弧の字に歪めた。


「まるで、特定の条件を満たす果実だけを、丁寧に収穫しているかのようですわね。……それで? 関東鋭爪会の幹部からは、その息子の捜索と、犯人への『地獄の懲らしめ』の依頼が、わたくしに来ているというわけですの?」


「へっ、ご名答で。報酬は、白紙の小切手に好きな額を書き込め、とのことでさァ。お嬢様、いかがなさいやすか? この『神隠し』の裏には、恐らくただの人間じゃねえ、何らかの巨大なカルト組織か、あるいは……我々とは別の、霊的な異常者が絡んでいる匂いがプンプンしやすぜ」


 孝子は、窓の外の枯れ葉が舞う景色を見つめながら、指先で千枚通しをくるくると回した。


「……よろしいでしょう。あのお高く止まった堕天使を切り刻めないのはひどく退屈ですが、この『神隠し』の犯人とやらも、わたくしの芸術を鑑賞するに足る、良いおもちゃになってくれるかもしれませんわ。……ガーディ、その薄気味の悪いネズミの巣を、徹底的に洗い出しなさいな。わたくしの『針』が、血の味に飢えておりますの」


「ハッ。御意のままに」


 ガーディの影は、獲物を追う猟犬のような獰猛な笑みを残し、床の闇の中へと音もなく溶けていった。


 一方、横浜から遠く離れた関西。

 兵庫県神戸市垂水区。六甲の山並みを背負う高清水家の白亜の豪邸は、朝から降り続く冷たい冬の雨に打たれ、周囲の風景を灰色のベールで覆い隠されていた。

 その広大な屋敷の奥深く、地下数十メートルの強固な岩盤をくり抜いて構築された巨大なラボラトリー。壁一面を覆い尽くす無数の大型モニターが青白い光を放ち、何十台ものスーパーコンピューターのサーバー群が、低い駆動音を絶え間なく響かせている空間。

 その中央に置かれたクリスタルガラスのテーブルで、高清水凉子は、真っ白なチェスボードに向かい合い、一人で難解な詰将棋ならぬ「詰チェス」の問題を解いていた。

 深い青色の高級なミッション系女学院の制服。寸分の狂いもなく計算されたように完璧なウェーブを描く栗色の髪。氷の結晶のように白く透き通る肌。彼女の存在そのものが、この無機質なラボラトリーの「秩序(コスモス)」を象徴する、究極のオブジェのようであった。


「……チェックメイト。……また三十二手。論理的な最短手ではありますが、どうにも美しくありませんわ」


 凉子は、白のクイーンを滑らせて黒のキングを追い詰めると、銀縁の伊達眼鏡を中指でクイッと押し上げ、心底不愉快そうに美しい柳眉をひそめた。

 彼女の並外れた知性と演算能力をもってすれば、どんな複雑な盤面でも、瞬時に何百万通りものパターンを計算し、最適解を導き出すことができる。だというのに、ここ数週間、彼女の脳内の演算プロセスには、極めて不快で、全く論理的ではない微細な「誤差(エラー)」が絶え間なく生じ続けていた。


(……ダボが。あの夜からずっとや。私の完璧な思考回路に、まとわりつくような不快な熱が残っとんのや)


 凉子の脳裏にフラッシュバックするのは、本牧埠頭の暗闇の中、彼女の絶対的な「雷」の防壁を、物理法則を無視して浸食し、焼き尽くそうと迫ってきた、あの地獄の「赤い炎」の記憶である。

 相手をいたぶり、苦痛の悲鳴を上げさせることだけを目的とした、非効率で、感情的で、野蛮極まりない混沌(カオス)の力。それが、完全無欠であるはずの彼女の秩序のシステムに、決して無視できない強烈な「ノイズ」としてこびりついているのだ。


「あんな下品な女の炎が、わたくしの演算に影響を与えるなんて。……本当に、吐き気がするほど不愉快やわ。次にあのおかっぱ頭に会うたら、問答無用で脳髄から直接ショートさせて、塵一つ残さずデリートしたる」


 凉子が苛立ちを隠さずにチェスの駒を指で弾いた、まさにその時。

 ラボの自動ドアが音もなく開き、彼女の唯一の理解者であり、専属のブローカーである詫間亨が、何台ものタブレット端末を抱えて、足早に入室してきた。

 普段は執事のように冷静で完璧な所作を崩さない彼にしては珍しく、その表情には明らかな焦燥と、研究者としての異常な興奮が入り混じっていた。


「……いかがなさいましたの、亨さん。貴方らしくもなく、足音がコンマ数秒ほど乱れておりましたわよ」


 凉子は、チェスボードから視線を外し、氷のように冷たい青い瞳で亨を見据えた。


「申し訳ありません、凉子様。ですが、ご報告しなければならない、極めて非論理的で、かつ看過できない異常なデータパターンを検知しました」


 亨は、凉子の前のクリスタルテーブルにタブレットを並べ、メインモニターの表示を切り替えた。


「ここ数週間、私が日本全国の警察のデータベース、及び各自治体の住民ネットワークに仕掛けていた監視プログラム(クローラー)が、ある特定の条件を満たす『行方不明事件』の異常な増加を警告してきました」


「行方不明事件? 人間が社会からドロップアウトするなんて、この泥にまみれた地上では日常茶飯事のバグですわ。警察のシステムがそれを処理しきれないだけのことでしょう?」


「単なる家出や事件であれば、私も報告には上がりません。問題は、その失踪の『質』と『規模』です」

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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