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腹減った夜と、腹ペコのきゅーさ

私は焚き火の前に座り、炎を眺めていた。少しずつ体に温かさが戻ってきたが、それとは別の、もっと不快な感覚が胸の奥に広がっていた。


空腹。


強い、引っ張るような空腹感。最後にお腹いっぱい食べたのは……死ぬ前だった。今はそれからどれだけの時間が経ったのかすら分からない。胃が静かに、しかし執拗に存在を主張してくる。


私は腹に手を当て、静かに息を吐いた。


「……腹減ったな」小さく呟いた。


数分間黙っていたきゅーさが、突然声を上げた。


『……私も』


私は動きを止めた。


頭の中で、数秒の沈黙が落ちた。


「……は?」小さく聞き返した。


『私もお腹すいた』きゅーさは、少し困惑したような声で繰り返した。『肉が食べたい……』


私はゆっくりと首を回した。彼女の姿は見えないと分かっていながら。


「待て。お前……本気で言ってるのか? お前は俺の頭の中にいるんだぞ。どうやって腹が減るんだ?」


『私にも分からない!』きゅーさは少し声を荒げた。『私はただのニューロネットワークだよ? お腹なんてないはずなのに……でも、本当に今、肉が食べたくなった。焼いたやつ。皮がパリッとしたやつ』


私は数秒間、言葉を失った。


「……お前、今俺をからかってるだろ?」


『違う!』きゅーさは苛立ったように言った。『私だってビックリしてるんだよ! なんか……おかしい。まるで、私の一部もお前の欲求を感じてるみたい。……よく分からないけど、今お前の中にいることが関係してるのかも』


私は顔を手で覆った。


「最高だな。頭の中にただの毒舌きゅーさがいるだけじゃなくて、今度は腹ペコの毒舌きゅーさまでついてるなんて」


『ちょっと!』きゅーさは鼻で笑った。『私は毒舌なんかじゃない。ただ正直なだけだよ。それに今は腹も減ってる。だから却下英雄、さっさと何か食べ物を探しに行け』


「『何か食べ物を』……って、お前もか?」私は片眉を上げた。


『そう』きゅーさはきっぱりと言った。『私もお腹が減ってるんだから、一緒に食べ物を探す。それが道理だろ』


私は大きく息を吐いたが、それでも立ち上がった。今の彼女と議論しても無駄だ。


「……分かった。探しに行くよ。ただ、お前は今から黙ってろ。変なキノコに手を出したくらいでいちいち叫ぶなよ」


『どのキノコによるけどね』きゅーさはぶっきらぼうに言った。『また「青の哭き虫」に手を伸ばしたら、耳が痛くなるくらい叫んでやるから』


私は小さく鼻で笑い、焚き火から少し離れた森の奥へと歩き始めた。月明かりがそこそこ明るかったので、完全に真っ暗というわけではなかった。私はゆっくりと周囲を見回しながら、食べられそうなものを探した。


数分が経った。今日は腹を空かせたまま寝ることになるかと思っていたそのとき、頭の中で小さな「カチッ」という音がした。


『……えっと、ご主人様?』


「なんだよ、また」私は振り返らずに疲れた声で聞いた。


『私……今、なんかやっちゃった』


私は立ち止まった。


「何をやった?」


次の瞬間、目の前に淡く光る、半透明の青みがかった地図が浮かび上がった。森と、少し離れた川、そしてゆっくりと動いているいくつかの赤い点が表示されていた。


私はその場に凍りついた。


「……なんだこれ?」


きゅーさは数秒間、言葉を詰まらせた後、少し戸惑ったような声で言った。


『……どうやら、私がうっかり地図を起動しちゃったみたい』


私は目の前に浮かぶ半透明の地図を眺めた。まるでホログラフィックなインターフェースを見ているような、奇妙な感覚だった。手に何も持っていないのに。


「……これ、どうやって動かすんだ?」


『私にもよく分かってない』きゅーさは正直に答えた。『ただ……できる気がしたの。なにかがカチッと切り替わったみたいに。そして、こうなった』


私はゆっくりと手を動かし、地図を操作してみた。確かに周囲の地形が表示されている。森、少し離れた川、そしてゆっくりと動くいくつかの赤い点。


「この赤い点は……何だ?」


きゅーさは一瞬、沈黙した。


『……生き物だと思う。モンスターか、動物か。よくは分からないけど、結構な数いる』


私は小さく鼻で笑った。


「最高だな。今俺たちは、わけの分からない赤い点だらけの森を歩いてるってことか。最高にいい状況だ」


『文句言うなよ』きゅーさはあっさりと言った。『腹が減ってるなら、動くしかないだろ? それとも一晩中焚き火の前でシャウarmaの夢でも見てろってのか?』


私は大きく息を吐き、地図上で赤い点が少ない方へと歩き始めた。なるべく音を立てないよう、慎重に進む。きゅーさは相変わらず周囲のものを見てはコメントを飛ばしてきた。


『左に何か実がなってる。まあ、食べるなよ。私はまだ調べてないから』

『お、変な草が生えてる。あれ、昔の知識だと鎮痛作用があったはずだけど』

『……まあ、お前は脳がゴキブリ並みだから、痛み止めなんていらないかもな』


「うるさい」私は小さく呟いた。


さらに数分が経過した。今日は結局何も食べられずに終わるのかと思っていたそのとき、前方で小さな物音がした。私は動きを止めた。


十メートルほど先の地面に、小さな生き物が何匹か座っていた。一見すると普通のウサギのように見えた。小さくて、ふわふわした毛並みで、長い耳をしている。ただ……


「……ウサギか?」私は小さく呟いた。


しかし、その生き物たちは小型の犬くらいの大きさがあり、毛並みは暗い灰色で、目は赤く光っていた。そして何より、口元からかなり長く鋭い牙が突き出ていた。とても「可愛いウサギ」とは呼べない外見だった。


『……あれはウサギじゃない』きゅーさは静かに言った。『少なくとも、普通のウサギじゃない』


そのうちの一匹が、突然こちらに顔を向けた。赤い目が闇の中で光る。次の瞬間、低く、しかし明らかに敵意のある音を立てた。まるで威嚇するような、甲高い鳴き声だった。


私はゆっくりと後ずさった。


「……あいつら、凶暴だな?」


『かなり』きゅーさは肯定した。『それに、どうやら腹を空かせてるみたいだ』


その言葉を裏付けるかのように、三匹の生き物が同時にこちらを向き、地面に体を低くしながらゆっくりと近づいてきた。その動きは普通のウサギとは明らかに違っていた。まるで獲物を狙う捕食者のように、意図的で危険な動きだった。


私は小さく舌打ちした。


「最高だ。異世界に来た初日に、クソ凶暴なウサギどもに食われそうになるとはな」


きゅーさは一瞬、沈黙した後、明らかに含みのある声で言った。


『……殺し方、教えてあげようか?』


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