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空語の輪郭

挿絵(By みてみん)

識の言葉を聞いた瞬間、白い存在たちの輪郭が少しだけはっきりした。


紙みたいに薄い。人の形に近い。だが、中身がない。


言葉の裏に貼りついて、意味の代わりに、そこにいる。


透真はもう一度ビジョンを見た。


自由。成長。本質。


どれも、もともとは嫌いな言葉じゃない。むしろ必要な言葉だと思っていた。


なのに今は、その裏に空っぽなものがいる。



透真

 「意味を失った言葉、ですか」


 「はい」


透真

 「でも、意味がないなら、人は動かないんじゃないですか」


 「意味はなくても、響きは残ります」


透真

 「響きだけで、人が動く?」


 「はい」


透真

 「……嫌な話ですね」


 「響きだけの方が、扱いやすいことがあります」



透真は、思わず黙った。


扱いやすい。


その言葉だけが、妙に仕事の感触を持っていた。


会議で使われる言葉。資料に並ぶ言葉。誰も反対しにくい、綺麗な言葉。


透真

 「それは、人を騙しているということですか」


 「いつも、そうとは限りません」


透真

 「じゃあ、何なんですか」


 「人が、自分で自分を動かすために使うこともあります」


透真

 「…自分で」


 「はい。自由。成長。本質。自分らしさ」


識は大型ビジョンを見上げた。


 「どれも、本当は悪い言葉ではありません」


透真

 「それは、わかります」


 「だから危険です」


透真

 「……いい言葉だから、危ない」


 「はい」


透真は苦笑した。


透真

 「さっきから、納得したくない説明ばかりですね」


 「納得しなくていいです」


透真

 「いいんですか」


 「まずは、見てください」

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