STYLE RUNWAY
さっきまでの清潔な明るさとは違う。扉の向こうから漏れてくる光は、鋭かった。
黒。銀。赤紫。
透真は、思わず足を止めた。
その先には、巨大なランウェイが広がっていた。
客席には、多くの参加者が座っている。だが、彼らの服がどこかおかしい。
ジャケットの肩に、言葉が縫いつけられている。スカートの裾に、言葉が流れている。シャツの胸元に、言葉がタグのようにぶら下がっている。
自分らしさ。センス。選ばれる人。洗練。個性。似合う生き方。
それらは、服だった。
いや、服の形をした言葉だった。
透真は、喉の奥が少し詰まるのを感じた。
自由の会場では、言葉が人を軽くしていた。
ここでは、言葉が人を見られるものにしている。
見られる。比べられる。選ばれる。笑われる。
ランウェイの上では、一人の女性が歩いていた。
彼女の服には、大きく「自分らしさ」と書かれている。
だが、その服は彼女の身体に合っていなかった。
肩が落ちている。袖が長すぎる。裾が床を引きずっている。
それでも彼女は、笑おうとしていた。
観客は拍手している。
誰も、それが苦しそうだとは言わなかった。
透真「……何ですか、ここ」
識「言葉を着せる場所です」
透真「着せる?」
識「はい」
透真「比喩じゃなくて?」
識「この場所では、比喩ではありません」
透真「ですよね」
識「言葉は、人の輪郭を整えることがあります」
透真「それは、わかります」
識「でも、間違った寸法の言葉は、人を締めつけます」
透真は、ランウェイの女性を見る。
女性は笑っている。けれど、首元が苦しそうだった。
透真「……あれ、誰か止めないんですか」
識「本来なら」
透真「本来なら?」
識は、ランウェイの奥を見た。
識「直す人がいます」
透真「セナ、ですか」
識「はい」
透真「じゃあ、今は?」
識の表情が、少しだけ硬くなる。
識「切る人がいます」




