次の扉
イベントホールの照明が、少し落ちた。
白かった広告が、ゆっくりと黒へ切り替わる。
次の案内が表示される。
NEXT STAGESTYLE RUNWAYあなたに似合う言葉を見つける夜
画面の中に、黒いランウェイが映る。
スポットライト。美しい衣服。拍手する観客。そして一瞬だけ、銀色の鋏の影。
透真は、その影を見逃さなかった。
さっきまでの白い自由とは、空気が違う。
軽さではない。開放感でもない。
もっと鋭い。
何かを選ぶというより、何かを裁くような光だった。
透真「次は、センスですか」
識「はい」
透真「自由の次に、自分らしさ」
識「自然な流れです」
透真「嫌な自然さですね」
識「人間がよく歩く順番です」
遠くで、朔が透真に小さく頭を下げた。
朔「ありがとうございました」
透真「いえ。ちゃんと休んでください」
朔「はい。少しだけ」
透真「少しだけで」
朔は、少し笑って会場を出ていった。
透真はその背中を見送る。
透真「救えたんですかね」
識「救った、というより」
透真「より?」
識「落ちる速度を少し遅くしました」
透真「地味ですね」
識「大事です」
透真は苦笑する。
透真「そうですね」
黒いランウェイの映像が、もう一度光る。
銀色の鋏の影が、静かに開いた。
識の表情が、少しだけ硬くなる。
透真「知ってるんですか」
識「セナを呼ぶ必要があります」
透真「誰ですか、それ」
識「言葉を、切らずに直す人です」
透真「それは、今すごく必要そうですね」
識「はい」
透真「で、その鋏の方は?」
識は、少しだけ黙った。
識「切ることでしか、整えられなくなったものです」
透真「……また嫌なやつですね」
識「はい」
黒い画面に、白い文字が浮かぶ。
STYLE RUNWAY
あなたに似合う言葉を見つける夜。
透真は、内ポケットの紙片に触れた。
帰り道 未定。
自由の次に、自分らしさ。
その順番が、妙に現実的で、だからこそ不気味だった。




