前へ目次 次へ PR 2/28 誰も見ていない 透真は周囲を見回した。 サラリーマン。 学生。 カップル。 観光客。 誰も足を止めていない。 見えていない。 その結論は、思ったより早く出た。 もし見えていたら、誰か一人くらいは空を見上げる。 誰か一人くらいは騒ぐ。 なのに全員、普通に歩いている。 白い異形の下を。 透真は近くの男に声をかけそうになって、やめた。 やめてから、やっぱり聞いた。 透真 「……あの、上、なんか変じゃないですか」 通行人 「上?」 男は一瞬だけビジョンを見る。 通行人 「広告ですか?」 透真 「……いえ、すみません」 男は怪訝そうな顔で去っていく。 透真は小さく息を吐いた。 見えていない。 本当に、自分にしか。