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ジユウの影
風が吹いた。
室内なのに。
白い紙片が、天井近くから降ってくる。
イベントの演出かと思った。
だが、紙片には文字があった。
退職届。片道切符。未返信の手紙。返されていない鍵。自由に生きたい。もう戻らない。
それらは羽根のように軽く舞い、参加者たちの肩や髪に触れては、すぐに消えた。
触れられた人々の表情が、少し変わる。
軽くなる。明るくなる。何かを決めてもいい気分になる。
透真は、天井を見上げた。
吹き抜けの上部に、白い翼の影があった。
人の形をしている。だが、その翼は羽根ではない。
破れた紙でできている。
透真
「……あれは」
識
「ジユウです」
透真
「自由?」
識
「はい。空語になりかけた自由」
透真
「なりかけた?」
識
「まだ、完全には空っぽではありません」
透真は、上空の影を見る。
美しい。見ているだけで、息がしやすくなる。
けれど、足元が少し薄くなるような感じがした。
透真
「綺麗ですね」
識
「はい」
透真
「危ないんですよね」
識
「はい」
透真
「両方なんですね」
識
「自由は、だいたいそうです」




