自由の展示室
中は、空港に似ていた。
出発ロビーのような白い空間。大きな窓。どこかへ続いていそうな通路。宙に浮かぶ広告。
そこには、自由に関する言葉がいくつも並んでいた。
会社に縛られない。
場所に縛られない。
人間関係に縛られない。
過去に縛られない。
自分の人生を取り戻す。
どれも、強い言葉だった。
強すぎるくらいに。
展示台には、片道切符が置かれている。開いた鳥かごがある。軽いトランクがある。世界地図がある。ノートパソコンと、白いマグカップと、海辺の映像がある。
参加者たちは、それらを眺めていた。
目が輝いている人もいる。泣きそうな人もいる。何かを決める直前のような顔をしている人もいる。
透真には、その全員が少しだけ危うく見えた。
透真
「自由って、展示にするとこうなるんですね」
識
「わかりやすい自由です」
透真
「わかりやすいのは、悪いことなんですか」
識
「悪くありません」
透真
「またそれですか」
識
「でも、わかりやすいものは、持ち帰られやすいです」
透真
「持ち帰られる?」
識
「はい。自分の事情に合わせないまま」
透真は、片道切符の展示を見る。
透真
「自由って、そんなに簡単に持ち帰れるものじゃないですよね」
識
「本来は」
透真
「本来は、か」
その時、近くの若い男が、展示の片道切符をじっと見つめていた。
透真は、彼の横顔に目を留める。
疲れている。だが、どこかで救われたような顔でもあった。




