SHIROGANE GATE HALL
SHIROGANE GATE HALL。
大型ビジョンに表示されていた会場名は、駅から少し歩いた高層ビルの中にあった。
ガラス張りの入口。
白い照明。
整った案内板。
笑顔のスタッフ。
そこだけ雨の夜から切り取られたように、妙に明るかった。
入口の上には、あの言葉が光っている。
FREE YOUR LIFE
もう縛られない生き方へ
透真は、少しだけ足を止めた。
交差点で見た白い紙片の翼が、まだ頭に残っている。
それでも、人々は普通に受付へ向かっていく。
会社帰りらしい若い男性。
キャリーケースを引く女性。
スマホを握りしめた学生。
疲れた顔の中年。
明るく笑うスタッフ。
誰も怪物を見に来た顔はしていなかった。
ただ、何かから離れたい人の顔をしていた。
透真
「思ったより、普通ですね」
識
「普通に見える場所ほど、言葉は入り込みやすいです」
透真
「それ、もう全部怖く聞こえるんですが」
識
「全部が怖いわけではありません」
透真
「じゃあ、ここは?」
識は入口の白い光を見た。
識
「少しだけ、怖いです」
透真
「少しだけで済むといいですね」
識
「そうですね」
透真は識を見る。
透真
「……入れます?」
識
「自動ドアなら、たぶん」
透真
「たぶん?」
識
「前回、半分だけ開きました」
透真
「半分だけ」
識
「私が薄いせいだと思います」
透真
「そういうことを普通に言わないでください」
識は少しだけ首を傾げた。
識
「普通ではありませんか」
透真
「少なくとも、俺の普通ではないです」
識
「では、覚えておきます」




