12.親友! エリーの友達
レイ達は、エリーの人間大砲で防御網に穴を開け、キャンピングカーの迷彩機能を使い機械人間都市に潜入した。舗装されている道を、偽装したトラックで進んでいく。
「マスター。エリーさんのおかげで、うまく潜入できましたね」
「そうだな! やっぱり、自分でついてくると言った奴は根性が違うな!」
レイ達は、純粋にエリーを褒め称えた。
「はい……頑張りました……」
エリーは、複雑な気分だった。
「どうせ潜入自体は、敵にばれてるだろうがな」
レイは、空をうろつくドローンのような監視機をみながら言う。
「まあ、そうですよね……」
来る敵来る敵、人間大砲というとんでもない方法で全部倒してしまったのだ。
気づいていない方がおかしい。
「とはいえ、中に入ってしまえば、しばらくは大丈夫だろう。この都市には、まだ“普通の暮らし”をしている人間も多い。完全に機械化された連中ばかりじゃない。こちらが暴れない限り、強行なことはしてこないだろう」
「そうだと思います」
ついこの間まで、ここに住んでいたエリーは頷く。
都市の風景は、エリーの覚えているものとほとんど変わりなかった。
街角のスクリーンには、機械化促進のスローガンが表示されて、以前より無機質で冷たい印象が強くなっている。
「お前のような、機械人間になる前の連中が住んでる地区があるんだろう」
「私の友達がいる学校はこの先です」
エリーは懐かしむように目を細めた。
「友達というのは、生身の人間でいいんだな?」
「はい。機械人間になりたい親と一緒に移り住んできた子供達です」
アルファの運転で進んでいくと、大きな校舎が見えてきた。
校庭では、遊んでいる子供たちの姿が見える。
「みんな! ただいま!」
何人か、エリーの顔を見て笑顔を見せた。ただほとんどの人間は暗い顔に戻ってしまう。
子供たちの輪の中から、男の子が一人飛び出してきた。
「なんでエリー戻ってきたんだよ。うまく逃げ出したんだろう」
「コウ! それは、あなたたちを助けに」
「でも、俺はもうダメみたいだ。戻れそうにない」
その少年の腕には、銀色の関節がむき出しになっており、動くたびに小さな機械音が鳴り響いていた。
それは、エリーのように手足だけではなかった。全身の至る所から小さな機械音が鳴り響いている。
「もう機械人間に……」
「慣れたら、どうってことはないんだけどな」
コウは、無理に笑おうとする。だが、その笑顔はどこか歪んでいた。
「心配なのは、俺よりミラの奴かな」
コウと呼ばれた少年は、校庭の端の方で、ぼんやり座っている少女を指さした。
「ずっと泣いてるよ。まあ、もう涙なんて流れないんだけどな」
少し自虐を含んだ言葉に、エリーは胸を痛めた。
(間に合わなかったなんて……)
どうしようもない絶望が心を覆いつくして、エリーは立っているのがやっとだった。
そんなエリーの頭をレイはポンと叩きながら、コウに尋ねた。
「お前らが、機械人間にされたのは最近か?」
「まあ、エリーが逃げ出したあとだから、そうだよ」
「なら、学校に髪の毛ぐらい落ちてるかもしれないな。アルファ、回収装置を出してくれ」
「はい。わかりました」
キャンピングカーから、ロボット掃除機が多数発進した。
「髪の毛なんて、どうするんだよ」
「そこから遺伝子情報を解析する。全くなければ、子供の頃の写真ぐらいはあるだろう」
「それは、あるけどよ」
「成長の仕方などから分析して、組み上げる」
「大体、お前は誰だよ」
「俺はレイ。エリーの師匠だ! 電子人格データから生身の人間を蘇生する研究を完成させるためにここに来た。それが俺の使命だ!」
「本当かよ!」
「うん。この人は、私の先生。ずっと私のこと助けてくれたの」
「とにかく、お前とそこの娘の元の姿を取り戻す手がかりを集めてこい」
「わかった。いこうミラ」
レイの力強い言葉で、笑顔になった二人を見送る。
「先生、本当に髪の毛からみんなを復元できるんですか?」
「人の遺伝子パラメーターはたったの二万たいしたことはないさ」
「たったではないと思いますよ」
「それに対して脳のシナプスのパラメーターは14兆個、しかも不規則に組代わり取り出すこともできな……かった」
「かった?」
「その偉業を成し遂げた者がいる。そいつの名はリナ、機械人間が崇めている女神リナーシャのことだ」
「彼女が成し遂げた。できることがわかっているんだ。つまり、俺にだってできるということだ!」
自信満々に語るレイ。
エリーは、その言葉に少し安心する。
(ああ、きっと先生なら……)
その時だった。
レイの表情が一瞬で変わる。
腕を組んでいたレイが、ゆっくり足につけていた銃に手を伸ばす。
先生の纏う空気が、一気に変わった。
「先生、どうしたんですか……?」
エリーはその様子に気づき、尋ねる。
レイが警戒している視線の先には、エリーの見知った顔があった。
それは、二度と会いたくなかった機械人間。
「パパ、ママ……」
エリー達の前に現れたのは、レイが倒したはずのエリーの両親だった。




