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「じゃあ、ONにして自由に動いてみてくれたまえ。上手く動けたら、一周してきて欲しい。聞くところによれば一周、650mだ」

「分かりました」

 保は腰をかがめて、両足のスイッチをONにした。そして歩き始めると、次第に保の足はローラースケートのように滑らかに走行し始めた。いや確かに、それは歩行というよりは走行そのもの、といった動きだった。100mほど保が走行したとき、教授が叫んだ。

「よし! そのまま、GOだっ!」

 保は、いとも簡単に速度を早めると、視界から消え去った。そして、しばらくすると、反対側から戻ってきた。矢のような速さとは、まさにこのことか…と所員は皆、思った。もちろん、沙耶も分析システムを起動させ、そう感じていた。

「微細な制動をかける自動感知機能がポイントなんですよ」

 沙耶がたずねた訳でもないのに、教授は自慢口調で説明した。

『そうですの。すごいですわ』

 沙耶は会話システムの同調を選択した。

「丁度、競争馬に乗る騎手の手綱の塩梅あんばいです」

『脚先の微細な感覚が手綱なんですね。でも、ぶつかりそうになれば危険ですわね』

「いや、お嬢さん、その心配は御無用です。障害物感知センサーが瞬時に働いて、自動停止しますから…」

『なるほど…。でも故障ってことも、あり得ますわよね』

 保は元の位置へ戻り、スムースに停止した。

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