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「そうでしたか。あの車は、かなり骨董ですから…」
「ああ…、三十年近く乗ってるからなあ」
教授は白衣を着て席に着くと、今日行く国立競技場での行程表に目を移した。但馬は白衣をロッカーから出し、自席のパソコンをONした。影響されてか、手持無沙汰の保も同じ動きをした。
「今朝ね、ここで岸田君のじいさんに出会ったんだよ。ほん、今だ。孫をよろしくって言われ、参ったよ、ははは…」
「ああ…、一階のエレベーター前で降りた和服の…」
「そうだ。君も出会ったんだね。あのステッキに羽織袴山高帽姿、久しぶりに日本男児に出会った気分がしたよ。私もああいう格好をしてみたかったんだが…」
山盛教授は、しみじみと言った。
「つまらないものを、お見せして恐縮です」
「いやぁ~逆だね、岸田君。いいものを見せてもらった。…そんなこたぁ~この際、どうでもよかったんだ。国立行きがあった…」
教授は席を立ち、激しく動き出した。そこへ、アフロヘアーをした後藤が出勤してきた。
「おはようございます!」
「やってきたか…。君は全然、アグレッシブじゃないな」
教授の声は半ば諦め声である。




