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「いやぁ~、こちらこそ…」
教授はドギマギして返した。
「じいちゃん、それならそうと、うちへ来てくれりゃいいじゃないか」
「すまんな、保。いやあ~、旧友が帰してくれそうにないんでのう。抜け出てきたんじゃ」
「朝は?」
「ははは…。まだ食っとらん。東京駅も真新しゅうなったそうじゃから、美味いもんでも食って帰るわい」
「それがいいよ。次は、ゆっくり来てよ。名所案内でもするから」
「偉う、田舎もんに見られたもんじゃ。わしももう年かのう…」
そう言うと長左衛門は長く伸びた顎鬚を片手で撫でつけ、高らかに笑った。
「昨日、一昨日、そして今日と、三日連続で一族がお越しとは・・、これも何かの奇遇だな、岸田君!」
保は、いらんことを言う教授だと思った。長左衛門が、もう少しで帰ろうとしていた矢先だったからだ。
「これは、異なことを…。わしの一族の者が誰ぞ参りましたかな? はて?」
「ははは…。昨日、一昨日と岸田君のお従兄妹さんが…」
「保の従兄妹? はて、誰じゃろう…。わしの兄弟は早う死んどるし、その子はどこ住んどるか分からんはずじゃが…」
「あっ! じいちゃんには言ってなかったんだけどね。そう言って三日前に訪ねてきた娘がいるんだ…」
「ああ、そういや、一人おったな、そんなのが…」
納得した長左衛門に、保は、ほっとした。なんといっても、上司の山盛教授が目の前にいるのだ。話が合わなければ窮地に立たされ、具合が悪い。




