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 保にすれば沙耶と出かける車が欲しかったから、車で通勤する教授がうらやましかった。だが保のマンションは生憎あいにく、駐車スペースがなく、バイクを考えていた矢先だった。雨の日は厄介だが、沙耶を後ろに乗せてバリバリ飛ばすのもいいか…と思えた。

 保が研究室へ入るドアを開けると、予想どおり但馬の姿はなく、室内は無人だった。

「教授、思ったとおり、講師は来てませんよ」

「そうだな。少し早いからな」

 教授は腕時計を見ながらそう呟き、保の後から入ろうとした。そのとき、教授の肩を後ろから男が突っついた。

「誰だっ!」

 ギクッとして、山盛教授は後ろを振り向いた。保も教授の声に驚いて、振り返った。そこには、ステッキをつき和服姿も凛凛しい長左衛門が立っていた。

「あ、あなたは、どちらで?」

 教授は恐る恐るたずねた。

「じいちゃん!!」

 長左衛門が答える前に、保が叫んでいた。

「えっ!? 岸田君のお身内?」

「はあ、いつも孫がお世話になっとります。ちょっと、ご挨拶だけして帰ろうと思いまして、待っとりました」

 長左衛門は山高帽を脱ぐと、丁寧な挨拶を教授にして軽くお辞儀をした。

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