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しばらく意識が遠のいていた保は沙耶によって起こされた。靴も脱がず、そのまま玄関で眠ってしまったようである。
『こんなところで…。いつでも入れるわよ』
沙耶は優しくそう言うと、Uターンしてキッチンへ向かった。
「ああ、すまない…」
上半身を起こしながら背伸びし、なんか嫁だな…と思え、保は小さく笑った。
「今日は、いろいろあったけど、なんとか合格ラインだ」
保はダイニングキッチンのテーブル椅子に座りながら口を開いた。
『そう。今日は、ちょっと勇み足かな・・って思ったんだけど。よかった…』
流し台の前で調理しながら、沙耶は手を止めず言った。
「これで沙耶もひとりで外へ出られるぞ」
『お買いものとかあるし、助かるわ』
人間と違い、沙耶の喜びは理詰めなのだ。はっきりしたメリットがなければ、喜びとはならないのだ。保も、そこら辺りはよく分かっている。プログラムしたのは自分だからだ。細かい修正は今後も出てくるかも知れないが、通常の行動に支障とならない程度の合格ライン突破だった。まあ、普通の人でも天然呼ばわりされる人もいるから、人に混ざっても違和感にならないだろう…と思った。
しばらくして、保の携帯が鳴った。保は新聞を読んでいた。そろそろ食べようと思っていた矢先である。沙耶は調理を終え、保の対面へ座ったところだった。




