53/310
-53-
「まあ、おかけ下さい。そのうち、他の連中も来るでしょうから…」
但馬は隅の応接椅子を手で示して言った。
「そうさせて、もらいな」
保も下手の言い方で促した。沙耶は素直に頷くと、応接椅子に座った。保も鞄を机下に置くとロッカーから白衣を出して着ながら自席の椅子へ、ゆったりと座った。三人? は何も話さず、気 拙い雰囲気が数分、続いたが、出来の悪い後藤がやってきて、悪い空気は一変した。アフロヘアーは山盛教授の暗黙の威圧効果で小ブリになっていたが、その後も髪型が変わる気配はなかった。フケは減ったようで、定期的に洗ってるみたいだった。その点は山盛効果があったといえる。
「おはようさんです」
後藤がロッカーを開け、白衣を出す。この男、関西出身だから、時折り関西 訛りが出た。今朝もそうだった。後藤は沙耶を見て驚くことなく続けた。
「こちら、どちらさん?」
「あっ! 田舎の従兄妹だ…」
「そうか…。えっ? その従兄妹がなぜ、ここに?」
「やあ、ちょっと見学したいって言うもんでさ。連れてきた」
沙耶は黙礼でお辞儀した。後藤も白衣を着ながら軽く会釈して席に腰を下ろした。そこへ山盛教授が、いつもの欠伸をしながら入ってきた。どうも欠伸が癖になっている嫌いがある。




