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「じゃあ、行ってくる!」
振り切るように沙耶から身を離し、保はマンションを出た。
「おはようございます!」
京東大学の新館3階である。保が山盛研究室のドアを開けると、相変わらず早い、出世狙いの但馬がパソコンを操作していた。担当パーツの最終チェックに思えた。
「ああ、おはよう…」
無頓着な返事も、いつもと変わりがない。そこへアフロヘアーを少し端正な小ぶりにした後藤が現れた。保が椅子に座るのとほぼ同時だった。訊けば、「君ね! もう少し、なんとかならんのかね…」と、無言の威圧で、教授にじっと髪を注視されたらしい。そこへ今度はその山盛教授が欠伸をしながら入ってきた。これで研究室のメンバーは全員が集合した勘定だ。その後の自動補足機がどうなっているのかといえば、完成が近づいていた。普通考えれば、なんだ! そりゃ、よかったじゃないか・・となるのだが、実は少しもよくなかった。そのことを数日前、山盛教授は泣く泣く三人に話した。
「君達…これが日の目を見ることは、残念ながらないようだ。実は今朝、上松電気の西田社長から電話が入ってね。製品採用案が役員会でボツになったそうだ」
言い終わった途端、強情で手強い教授が、よよと泣き崩れたのである。それを見て、研究室の三人は誰も声を出せなかった。




