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『それじゃ私、ブラッと見るから、保、ここで待っててね』

「ああ…」

 保は沙耶に言われるまま、ショーウインドウの隅で部外者を装って観察した。沙耶は前回と同様、あちらこちらと蝶のように見て歩く。奥で停止してじっと立つ女店員が、恰好の獲物を見つけた蜘蛛のように沙耶へ急接近した。よく見れば、この前と同じ、客あしらいの上手い店員だった。

「あらっ! この前の…。ほほほ…それなんかも、よくお似合いでございますよ、お嬢様」

 お嬢様ときたか…と、保は耳を澄まして聞き入った。

『そう?』

 沙耶は相手に褒められたとしても有頂天になるようなプログラムは組まれていない。自分の選択を肯定され、それが購入可能物だというただの認識なのである。ただ、沙耶の好みは保の好みをアレンジして入力されていた。それに加え、京東大学の女学生にもたずね、データ化したものがプログラムされていた。この判断プログラムには、さらにその日の天候、気温、湿度、場所柄、対人状況etc.が加味される。だから今の場合、素直に喜んだ『そう?』ではなく、ただの返事で『そう?』と言っただけなのだ。

『私は、こっちが好きなんだけど…』

「はいはい。それもピッタリ、ヒットしております。いいと思いますよ、お値段もお手頃ですし…」

 上手いベンチャラだ、また高くつくな…と、保は少しテンションを下げた。

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