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『ええ、まあ…。じゃあ、沙耶さんの情報待ちってことで、私は今後、待機状態に入っておりますから…』
『相変わらず話し方が硬いわね。…分かったわ、あとは長左衛門に残すメッセージね。私の方はもう作ってある』
『あっ! 私もそれは作成しておきました。単に遁ズラと思われるのも嫌ですからね』
二人? は携帯で話し続けた。状況が逼迫していないから、どうしても長電話になる。携帯の内臓電池のこともあり、双方とも充電器に差し込んだままだ。そんなことはお構いなしに話は続き、互いに電話を切ったのは、もう昼近くだった。しかし、人間社会から完全に消えてしまうのだから、細部に至る綿密な行動計画は練っておいたに越したことはない。アンドロイドの沙耶と三井の集積回路はマイコン(マイクロコンピュータ)によって、その辺りを完璧に洗い出していた。加えて、突発して起こり得る想定外の事象に対しても対応策を考え出していた。
「ただ今!」
保がマンションへ戻ったのは、その翌日だった。
「何もなかったかい?」
『えっ!? …別に何もないわよ』
人間なら事実を隠して嘘を言う場面だすら、感情の乱れでギクッ! と、内心では驚くところである。しかし、沙耶の場合、瞬時に適切な言動を選択するのみで、感情の乱れは皆無なのだ。ただ、人間的な標準会話システムが妙な違和感を起こさせない言葉遣いを使用させるから一応、驚きの素振りを会話に含ませるのだった。




