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『そんなに、お褒めいただきますと、恐縮しますわ』

 言語システムの謙遜を選び、沙耶は下手に出た。ただ少し、笑いが、ぎこちない。保は、逆に自慢っぽく見えるぞ…沙耶の言い方を心配したが、幸いにも長左衛門は沙耶を見ていなかった。

 二人が食事を終え、ひと通りの世間話も出尽くすと、三井は頃合いとばかりに携帯を握った。長左衛門が自分名義で買い渡したものである。

『岸田でございます。言っておりましたように、そろそろタクシーを、こちらへお回し願いたいと存じます。…はい! なにぶん、よろしく』

 すぐにホテルの者が出て対応したのか、三井はすぐに携帯を切った。長左衛門達が保のホテルを去ったのは、その20分ばかり後だった。長左衛門の旧友である大財閥傘下のホテルということもあり、タクシーとはいえVIPクラス待遇の長左衛門高級車の迎えだった。

『じゃあ…』

『はい、あのようなことでお待ち致しております…』

 マンションの出がけに、沙耶と三井が軽い言葉を交わした。

「んっ? なんのことだ…」

 保は三井の意味を解せず、沙耶にたずねた。

『ううん…、別になんでもないわ』

「そうか…」

 保は少しいぶかしく思ったが、深く追求せず聞き流した。

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