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『だから、私はこの場を離れてもいいんですよね?』

「はっ? そりゃいいでしょうよ。自由ですよ、この国は。ははは…」

 中年男は一瞬、変なことを言う女だな…と思ったが、笑って誤魔化した。

『じゃあ、行くわ。ああ、あのお店…』

 沙耶が歩き出し、中年男も動いた。その三分後、やっと出すものを出し、さっぱりした保がドアを出てきたのである。事の経緯とは、こうだったのだ。保は冷静にはなったが、やはり沙耶がいないから、今度は不安感が増してきた。もしや沙耶の身になにか…。憶測は悪い方へと傾いた。

 モンタナを出た右斜め前方には軽食が出来るエルドラドという佇まいが英風な店があった。沙耶とその男は、ごく有りふれた親子のような感じで店へ入っていった。ウエイトレスが二人が座った座席に近づき、水コップを二つ、静かに置いた。

「何に、なさいます?」

「あっ! 私はコーヒーを…君は?」

『えっ! あっ、ああ…。私は、いいの』

「いいのって、君!」

 困り顔で、その男は躊躇した。そして、申し訳なさそうにウエイトレスへ軽く会釈し、片手で後頭部をいた。

「…コーヒーお一つでよろしかったでしょうか」

「はっ? はい…」

 男はコクリと(うなず)いた。ウエイトレスは怪訝けげんな表情で一礼し、去った。

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