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用を足し、保がモンタナのドアを出てきたとき、そこに沙耶はいなかった。保は一瞬、面喰って我を忘れたが、ここは落ち着かないと…と、冷静になった。近くを散歩でもしているんだろう…と思うことにした。しかしこの時、とんでもない事態が発生していたのである。保はもちろん、この時点ではそのことをまったく知らない。
話は保がモンタナのトイレへ駆け込んだ時に遡る。取り残された沙耶はブラリとモンタナの入口付近を行ったり来たりしていた。生憎この日、サングラスはしていなかった。
「お嬢さん! お綺麗ですね。よかったら私の雑誌のモデルになりません?」
ニコッとした笑顔で沙耶に近づく中年男がいた。沙耶は一瞬、たじろいだ。こうした場合の対処データがプログラムされていなかったのである。こうした場合、トラブルを回避する補助プログラムが働く。その補助プログラムには、相手に対して沈着冷静に対処し、相手の機嫌を損ねてはならない…etc.のプログラムが組み込まれていた。そのプログラムが作動したのである。
『あの? どなたですか? あなたは。保のお知り合い?』
「はっ? ええ、そうです。こういうものです」
その男は咄嗟に嘘を言い、一枚の名刺を沙耶に手渡した。
━ 週刊アンノン 編集長 塚田 茂 ━
『… …』
「悪い話じゃないんですよ、お嬢さん。あちらのお店で少し話しませんか?」
『いいですよね』
「えっ?」




