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「なにかありましたら…」

 若い家政婦を下がらせたあと、トメも語尾を濁し、応接室から消えた。保としてはこの手下が少し厄介に思えた。

「じいちゃん、先っき、沙耶さんが言ったことだけどさ…」

「ああ、三井のことじゃろう。実はのう、まだまさる達には言っとらんのだ。じゃから、知っとるのは、わしと里彩だけでな。…それとお前達だ」

「そうか…」

 保は三井がアンドロイドであることを知らない態にした。

「まあ、そんなことじゃ、ホッホッホッホッ…。それでな、お前も黙っといてくれんか。他の者にはわしが言うでのう」

「ああ…。それはいいとして、三井さんは離れにいるんだろ?」

「そうじゃが…。食事は外食させておる」

「ふ~ん、そうなんだ。それにしても、じいちゃん益々、意気軒昂だな」

「ホッホッホッホッ…、笑わすでない。わしはもう、隠居じゃ」

 保にはアンドロイドを作る長左衛門が、とても隠居とは思えなかった。むしろ、好敵手に見えた。

 二人の間にバトルが起きたのはその十日後だった。とはいえ、それはメンタルな両者の戦いで、お互いの腹を探り合う、いわば頭脳戦の様相を呈する電話でのトークバトルである。長左衛門は保と沙耶が東京へ戻ってから偶然、三井から情報を入手したのだった。保達がUターンするまでに三井が情報を提供することも出来たのだが、長左衛門はかなかったから三井も答えなかったのだ。ただ、それだけのことである。保達にとっては不幸中の幸いで、敵地でのバトルは回避されたということである。

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