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「なんじゃ、食事は、なされんのか?」

『はい。今、お医者様に止められてますから…』

「ああ、左様か。ではのう…」

 得心した長左衛門は軽く頷くと遠退いた。保は、危ねえ危ねえ! と、冷や汗を流した。保達が大テーブルを囲んでいる頃、沙耶は一冊、10~15分ペースで片っ端から本を読破していた。それもただ読むのではなく、すべてデータ化して集積し、記憶メモリー回路で保存しているのだった。通りがかった家政婦のトメはその場を垣間かいま見て唖然とした。トメはしばらく氷結したように眺めていたが、怖くなったのか、急いで駆け去った。

『あらっ! あなたは?』

『私は書生の三井といいます。そちらこそ、どなたです?』

 まだ大テーブルを囲んで賑やかな食事が続けられていた。そのとき、書棚前では異変が起きていた。長左衛門が停止させていた隠れ部屋の三井が勝手に起動し、離れから母屋へと移動していたのである。もちろん、そんなことになっているとは長左衛門も手下の里彩も、まったく知らなかった。

『私? 私は保さんの友人の従兄妹いとこですよ』

『ははは…、ややこしいご関係なんですね』

『ちっとも、ややこしくなくってよ!』

 沙耶は怒っている訳ではなかった。感情システムと言語認識システムを駆使していた。

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