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「すまん、待たせたな。…行こう」
『うん…』
停止していた沙耶は、また歩き出した。俺に反発はしない…この点はOKだなと、保はまた観察を始めた。そのまま、しばらく歩いていたが、対向する通行人も別に注視することなく通り過ぎたから、ほぼ成功だろうと、保は、まずまずの結果に頷いた。その後、計画どおり、デパ地下で食材を買い求めていると、昼近い手頃な時間になった。保は腹が減っていた。怪しまれるかも知れない危険性もあり、レストランには入れない。というのも、保はいいのだ。保はいいのだが、沙耶が、いけなかった。ただじっと注文もせず、早い話、飲まず食わずで保の前へ対峙して座っているだけ…という構図は、それ自体、違和感がありそうに思えた。店内の者は客、従業員問わず注目することだろう。これは、いけない。完璧にアウトだ。だから保はデパ地下の弁当を買って、適当な場で食べることした。
『これなんか、いいんじゃない』
沙耶が指さす[江戸御膳]と書かれた幕の内弁当のサンプルがガラス越しに見えた。¥1,200か…美味そうで手頃だ。自分は食べないのに最高のチョイスをするな…と保は思った。
「そうだな…」と素直に従って、保はその弁当を、すぐ注文して買った。食べる場…思いついたのが地下とは真逆の屋上である。保はホット茶を買い、デパ地下から一気に屋上へとエレベーターで昇った。




