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保にはその店女が獲物を見つけた蜘蛛に見えた。丁度、沙耶が見ていたのはEMADAのマキシ+SRYのシャツで、結局それにグッチィのバッグとサングラスが加わり、全品お買い上げとなった。支払うのは保である。余裕をもって出たのが不幸中の幸いで、高くついたものの、困らず店を出られた。
『ありがとっ!!』
すべてをその場で身につけた沙耶は、すごく機嫌がよかった。隣を歩く保は、脱いだ衣類を詰め込んだ袋を持たされ、この姿はなんか今一だな…と思えた。このパターン・・確か、親友の中林と飲みながら笑い合ったことがあったな…と、保は、ふと思い出した。「あんな、ぶざまって、ねえよなっ! ははは…」と、コップのビールを飲んでは笑い合ったんだった。そのぶざまが今の俺かっ! 保は手に持った紙袋を路上へ投げ捨てたくなる衝動を必死で抑えた。これでは郊外試験で沙耶の様子を観察するなどという相場の話ではない。いつの間にか冷静な心が消えてしまっていた。上手くしたもので、歩道の側面に飲料の自動販売機が見えた。保は、思わず片方の手をパンツのポケットへ忍ばせていた。自動販売機までの距離が狭まり、手前まで来た。
「沙耶、ちょっと待ってくれ。喉が渇いた」
保はそう言うと、自動販売機に硬貨を入れ、出た缶ジュースを一気に飲み干した。缶を屑籠へ捨てたとき、保の心は冷静さを取り戻していた。




