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里彩は意味が分からず、訝しげだったが、メニュー表を手にすると、楽しげに捲った。ダジャレが不発に終わりガックリするかと思いきや、長左衛門はその鬱憤の矛先を保の妄想へと向けた。
「保のやつ、今頃はあの娘とアンナことやコンナことをして乳繰りおうとるんじゃろうのう!」
「アンナことやコンナこと?」
呟いたつもりが里彩に聞こえたのである。長左衛門は慌てて咳払いを、ひとつした。
「… なんでもない! 里彩はそのようなことを知らずともよいのじゃ」
「ふ~ん…。あっ! 里彩、これがいい…」
「どれどれ…。そうか、これのう。里彩はビーフシチューがいいか? ならば、それにしよう」
そこへ、先ほどのウエイトレスがふたたび近づいてきた。
「何に致しましょう」
「ビーフシチューとやらを二つ所望いたす。おお! そうじゃ。わしには箸を頼む」
「かしこまりました…」
ウエイトレスは噴出しながら足早に下がった。
「じいちゃん、お箸以外はからっきしだったね」
「ほっほっほっ…それを言うでない。里彩は痛いところを突くのう、はっはっはっ…」
長左衛門は豪快に笑った。他の席の客が、いっせいに長左衛門を見た。




