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「いや、どうってことないさ…」
実は嵐を呼ぶ波乱の幕開けなのだが、保はこの段階ではまだ知らない。ただ、沙耶は藤崎の控えめな言葉に、大波乱の前兆が言語解析システムで分析していた。
『そうかしら…。なら、いいけど』
沙耶は保を心配させまいと意識を伏せた。自動保留機能で解析中に戻したのだ。そして、この日は暮れていった。
次の日、保が沙耶に起されて起きると、波乱の前兆が始まっていた。
『下見てよ、保!』
沙耶に言われ、眠気眼で窓下を見ると、どこで嗅ぎつけたのか、報道陣と思われる番記者の一人が辺りをうろついていた。近くには車が横づけされていた。一瞬、歴史好きの保は本能寺の変をふと思い、それは違うな…と苦笑した。
「こんなとこまで来るこたぁないだろうが…」
『マスコミもお仕事だからさ、仕方ないわよ』
沙耶に言われてみれば、確かにそうなのだ。じっと停止している番記者にも生活はあった。そう思えば、彼が不憫に思えてくる。保はそうした思いを振り切ろうと洗面台へ向かった。なるようになるさ…。洗面台の鏡に映る歯を磨く自分の姿を見ながら、保は何も考えないことにした。
「沙耶、さっそくで悪いんだが、初仕事だ。っていうか、俺へのボランティアだ」
『えっ?! どういうこと? 理由が認識できない』
「その言い方はアウト!」
『あっ! そうでした。でも、分かんないもん』
沙耶は笑みを浮かべて甘えた。感情システムが働いて、甘えて内容から逃避せよ・・を選択したのだ。




