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この日は教授の命令で全員、背広を着用していた。保も随分前に買った一張羅いっちょらをクローゼットの隅から沙耶に出してもらい着て出かけた。

「協同通信の蚤谷のみたにです。今回、発表された自動補足機は、大々的に企業とタイアップしていかれるご予定ですか?」

「あ~、その件に関しましては今後、ご要望に応じて前向きに考えております。残念ながら、現時点ではコスト面で生産ラインには乗らないとの問い合わせがございまして…」

「生産コストを抑えられる技術開発が待たれる訳ですね」

「そういうことです。はい、そちら…」

「毎朝新聞の麦田です。今回の機器は世界的に見ても画期的な開発かと思われますが、研究と開発目的は、どのようなものでしょうか?」

「様々な用途があろうかと思いますが、主目的は身体障害者の一助と山村住民の利便性を向上させる方向などのためです」

「週刊近代の花桃です。ノーベル賞の呼び声もあろうかと思いますが…」

「ははは…、とてもそのような。お恥ずかしい次第です」

 口ベタな山盛教授に代わり、講師の但馬が、さも自分が主催者のような顔つきで流暢りゅうちょうに答え続けた。後藤はその話しぶりが気に食わない様子で、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。その横に座る保は部外者のように聞き流した。

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