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『実はさ、30分ほど前に来られたのよ』

「出たのか?」

『ええ…。働くなら、その前に人に馴れておかなくっちゃ、と思って…』

「そりゃ、そうだが…。で、藤崎さん、何だって?」

『私が駅前のスーパーから猛ダッシュで走り去るところを見たって…』

「いつのことだ」

『先週の日曜…』

 この時、保は沙耶の抑制プログラムを完成させ、次のメンテナンスに入れ替えようと、そのままにしていたことを思い出した。行動を慎む感情システムへの補足プログラムである。

「そうだ! 沙耶、まあ上がれ!」

 沙耶は玄関から上がらないで、そのまま話していたのだ。保に促され、沙耶はフロアへ上がった。

『なに?』

「お前の修正プログラムを入れ替えるぞ。停止してくれ」

『どうしても、今なの?』

「ああ、今だ。忘れないうちにチェンジしないと、偉いことになるからな。ダイニングの隅でいい。今、持ってくるからな」

 すでにプログラムはマイクロチップに記憶させていたから、チップを交換するだけの単純作業だった。沙耶は言われたとおりダイニングの片隅へ行くと、直立姿勢で停止した。保は交換チップを取りに行こうとした。そのとき、玄関チャイムが鳴った。悪いタイミングだ…と、保は少しイラついたが、仕方なく玄関へ出た。

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