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保は、こうした一連の沙耶の行動を、ただ無言で見続けた。沙耶は和間へ入っていった。

「娘御は、どこへお勤めなのかのう?」

“あっ! それ? …〝

 コンピュータの弱点はデータにない予想外の事象である。その問いかけが長左衛門の口から飛び出した。だが、沙耶は動じない。予想外の事象に対する想定パターンも幾つか周到に準備されていた。

『申し遅れました。私、沙耶と申します…』

 沙耶は沈着冷静にそう言うと、かがんで長机へ盆を置き、下の座布団を二人に勧めた。

『おっ! これは失礼した…』

 あの長左衛門が恐縮する声が聞こえた。保は、未だかつて、そんな声を祖父から聞いたことがなかった。沙耶も、なかなかやるな…と思えた。このまま奮戦する沙耶を一人? にしておくことは出来ないと、保も和間へ急いだ。長左衛門と里彩はすでに茶を啜っていた。

「おお、保…。なかなか、いい娘御ではないか」

「ええまあ…、よくしてくれてます」

「お前、友人の従兄妹とか言ったが、妙に馴れ馴れしいのう」

「えっ?! ああ…よく知ってるもんで」

「そうなのか…。娘御! ではない、沙耶さんとか申されたな。事情は知らぬが、不出来な孫を宜しく頼みます」

 ああ、俺は不出来にされちまったぞ…と、保が思っていると沙耶が返した。

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