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「まあ、上がってよ!」

 保は話題をらさねば…と、笑顔で話を切った。長左衛門がフロアへ上がった。羽織袴はかま姿に白足袋の立派な体格が凛凛りりしい。

「おい保! これは、どこへ置く?」

 手に持ったステッキを眺めながら怪獣長左衛門は言った。これで、尻を叩かれたことが子供時代あったな・・と保は、ふと思い出した。

「あっ、ああ…。そこの傘立てに入れといてよ」

 (うなず)いて入れると、長左衛門はダイニングへとすすむ。この間も里彩はバタバタと走り回っていた。内部を偵察しているのか…と、思えた。長左衛門の後ろに従って、保もダイニングへ入る。そのとき、里彩は洗い場にいた。沙耶は洗い終えた食器を布巾で拭いていた。

「よろしくねっ!」

 物おじせず、里彩は沙耶を見上げて言った。

『こちらこそ…』

 沙耶もニコリと笑い、冷静に対応する。双方ともに隙がなく、どこか火花が散っているように保には思えた。

「苦しいのう、保よ。…まあ、いいわ」

 その光景を見ながら長左衛門がニヤリと笑って言う。沙耶は、その言葉を感情認識システムで解析していた。

“怪獣には、お見通しなのね…。でも、私の正体はバレてないみたい…”

 沙耶は、行動パターンを幾つかの模範データの中から選んでいた。

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