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『気楽な研究なんですね?』

「えっ!? いや、これは面目ない」

「沙耶!」

「いや、いいんだ岸田君。そのとおりなんだから、私も調子に乗り過ぎたようだ。お嬢さん、ありがとう」

『すみません…』

 沙耶は小声になった。

「いや、いやいやいや、参ったなぁ~、ははは…」

 山盛教授は片手でボリボリと後頭部を掻きながら高らかに笑った。この人は困ったときには必ず後頭部を掻いて笑うな…と保が気づいたのは、もう随分と前になる。教授のそばにいる後藤に沙耶の行動は少なからずわだかまりを残したが、ともかく彼女の失態は事なきを得た。さらには自動補足機も一応の成功結果が見られたことで、保は、またしてもやれやれ…と、胸を撫で下ろした。そして、沙耶が完成してからは気の休まったためしがない、と思えた。

 帰途の車に沙耶は乗らず、国立競技場のときと同様に別に帰ると言う。だが、前回とは違い、保のマンションとの距離はかなりあった。保は車へ荷を積み込み終えると、車の座席に座った教授に言った。

「ちょっと、二、三分、待って下さい。あいつに言っておくことがありまして…」

「ああ、いいよ…」

 教授は無関心に了解した。保は車を離れ、沙耶に近づいた。

「マンションまでは、かなりあるぞ。大丈夫か? 財布、持ってないだろ?」

 買物はすべて保がしていたから、沙耶が金を持ってる訳がない…と保は踏んだのだ。

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