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「ああ、それと…。岸田さん、どちらかとお住まいなんね? いえね、お家賃さえ払っていただければ、私はそれでよかですが…。マンションの五月蠅うるさか住人が、あることなかこと話してるのを小耳にはさんだもんで…」

「そうでしたか。はい、確かに…。妹が最近、都合で居つきましてね。ははは…」

 我ながら上手い! と保は思った。口から出まかせながら、いつかのパターンが高速のリターンエースで飛び出した。

「ああ…、いつやら言ってらした方ね?」

「えっ? ああ、そういや、そんなこともありましたね。お願いに伺ったんでした」

「そうそう、その方でしょ? 聞けば、なかなかお綺麗な方だそうじゃなかね」

「いやぁ、そうでもないんですが…。しばらく厄介になりますので…」

「分かりました。ははは…管理人の私が申すのもなんなんですが、ここんマンションはピーチクパーチクと賑やかな方が多かやけん、ご注意なさって下さい。いやなに…、過去に数人、あらぬうわさば立てられ、居ずらくなって出ていかれた住人も、おられたけん…」

「いや、これはどうも…」

 保は、この場は平穏に済まさねば…と思っていたから、藤崎に下手に出た。

「じゃあ、そういうことで…」

「25日でしたね? 分かりました。ご苦労さまでした」

 藤崎は保が言い終わると、軽く会釈してドアを閉じた。やれやれ…と保は安堵の溜息を吐いた。

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