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『さてと…ここも掃除するから、保、向こうへ行ってて』

「ああ…」

 沙耶に促され、居場所がなくなった敗軍の将は、力なく立って自室へと向かった。

 保の考える障害者や介護者といった他の人々にも有効利用してもらうためには、沙耶並みアンドロイドの大量生産が必要となる。だが、その前に保が一番嫌う、有名人に自身がなってしまうだろう。いや、マスコミにより確実になることは目に見えている。恐らく、100%の確率でなにがしかのノーベル賞を受賞するだろう。さらに金も入るだろう。日本だけじゃなく、世界中に俺の名が知れ渡ることだろう。人々からもチヤホヤされるに違いない。だが、俺はこんな、ちっぽけな欲しか持たない男だったのか。いや、有名人になるためにやってきたんじゃない…という保の自負心が激しく抵抗し始めた。保は、それが自分の思い描く目的を果たす上での最初の大きな障害であることを実感した。

 自分の部屋へ入り、そんなことを考えながら数十分したとき、ノックの音がした。

「いいよっ!」

 ノブが回って、沙耶が入ってきた。

『もう、いいわよ。それと、今夜、何にする?』

「俺は何でもいいよ」

『そう。リクエストなし、か…。じゃあ、適当に作っておくわね。ランチは?』

「軽いのが、いいな」

『パスタでいい?』

「ああ、頼むよ」

 沙耶は保の返事を聞くと、素早く反転して部屋から去った。

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