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「別に大したことはないんだ。対音圧バリア(シールド)の新プログラムと遠隔操作機の非常用予備回路をインストールしただけだから。他は一切、弄ってない…」
沙耶にそんな慰めをかける必要はないのだが、保はかけていた。沙耶に人間の抱く不安という感情はない。ただ、身に危険が及ぶ場合のみ避難行動に出るシステムは備わっていた。今回の付加プログラムでは保の遠隔操作機の要がない非常用回路のプログラムも組み込まれた。これで、万が一の場合でも、大事に至ることはないのだ。
保の声に、沙耶は静かに目を開けた。
『そう…。じゃあ、私は忙しいから!』
「えっ?!」
唐突な返答に保は戸惑った。沙耶は冷静な行動パターンを選択し、瞬時に洗濯しようと動き出したのだった。これかよっ! 感情の機微は、人間ではないから、やはり仕方がないか…と保は少しテンションを下げた。それは自分が沙耶のことをどう思おうと、沙耶が好意を抱くとか恋慕する気持にはならないことを意味していた。たとえば、出がけにキスはしてくれるが、沙耶のシステム内では飽くまでも儀礼的なものという認識で、プログラムに組み込まれているから、保を愛してとかの行為ではない。もちろん、保が一番大事な人・・というプログラムはされているから、その認識はあるのだが…。保はその辺りが少し寂しかった。欲情ではないにしろ、今一つ何かが欠けている気がしていた。




