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「お疲れ…。今日はここまでにしよう」

  山盛教授が白衣を脱ぎながら力なく告げた。

「はい。明日は休んでよかったんですよね? 教授」

 間髪置かず、早く帰りたい保が白衣を脱ぎながら返した。

「ああ…」

 全員がロッカ-へ白衣を入れ、辺りを軽く片づけた。研究室をバラバラに出ると、後藤が保の後ろから声をかけた。

「どうだ、帰りに一杯やらないか」

 軽い物言いだと保は思った。ちっとも自分の出来の悪さを反省してやしない。普通なら但馬のように早く来て、遅れを取り戻そうとするんじゃないか? と、その笑顔に少し保は怒れた。

「すまん。今日は、な…」

 えて、『おい! お前なっ!』とは怒らず、静かに保は辞退した。飲むならお前じゃなく、馬飼の中林だ…という気分もあった。

 保が地下鉄階段を降りる頃には外はすっかり暗くなっていた。沙耶が待ってるだろうな…と、なんか新婚の妻のところへ帰るような気分に保の心は躍っていた。

「ただいま!」

『あらっ! 思ったより早かったわね』

 マンション自室のドアを開けた保に、開口一番、沙耶がリターンエースで返してきた。

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