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保は応接セットに座りながら、そう思った。

『着替え、バスに置いておいたから…』

 チラッと顔を見せ、沙耶はキッチンへすぐ消えた。

「遠隔のパワーもアップさせにゃいかんな…」

 保は自分に言い聞かせるように呟くと応接セットの長椅子を立った。足はバスへと向いた。

 次の日、保が出勤したあと、沙耶は気分に任せて、ブラリと街へ出た。沙耶にとって人間世界の事物は、集積データを元にすべてが解析され、その結果によって行動パターンが変化するよう仕向けられていた。もちろんその場その場での冷静な判断システムも加味される。東京メトロと都営地下鉄…二系統…動態人口…と、全てに自動分析システムが働き、沙耶の体内で認知、蓄積されていく。

「ふ~ん。そうなんだ…」

 約二時間、あちらこちらと地下鉄を乗り回しただけで、沙耶は地下街を含む大都会東京の全ての地下情報を、ほぼ入手していた。

 今度は地上の各地を…と思った沙耶が地下を出ると、地上の街は人また人で溢れ返っていた。保が帰るまでに戻ればいいのだから、午前中の今、沙耶が時間を気にする必要はなかった。街自体は何度か郊外試験で保に連れ出されたことはあったが、その場所はブティック・モンタナの周辺に限られていた。今の沙耶は自由に移動できるのだ。何の束縛もなかった。沙耶は散策し始めた。そして、蝶が花の蜜を吸うように全てをデータ化し、集積していった。

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