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「野暮用は済んだのかね?」

 車内だからか、教授のニンマリした笑顔が、保には威圧感があった。

「はい、御蔭さんで、どうにか…」

「はい、もちろん。そのつもりです」

 会話が途切れた。教授も、周りの人混みを気にしてか、余り多くを語らない。保にはそれが救いだった。

「じゃあ、ここで失敬するよ…」

 教授は人混みにまぎれて、降りた。保が降りる駅よりも三つ手前だった。そういえば保は教授の家を知らなかった。この辺りか…と、保は思った。

 マンションまで歩くと、もうすっかり暗くなっていた。彼方にスカイツリーの夜景が鮮やかに美しく浮かび上がっている。完成したのは、つい最近だと思っていたが…と、保は月日の流れの早さを思った。

「ただいま…」

 いつもの言葉で、沙耶が顔を出した。

『どこへ行ってたの?』

「えっ!?」

 保は、またまた驚かされた。教授に出会い、ギクッ! で、次は沙耶のひと言で、またギクリ! だ。

「どこって…」

『私には隠しごとは出来ないんだから…』

「分かってたのか?」

『ええ、出るときからお見通し…』

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