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-103-

 馬飼まがい商店まで20分程度で行けることは、おおよそ見当がつく。保は最も近いルートを頭に描いて動いた。

 地下鉄を乗り継いで保が馬飼まがい商店へやってきたとき、丁度、中林が店前にいた。

「おう、どうした? 珍しいな、こんな時間に…」

「いや、なに…。沙耶の関係でな」

 中林だけがアンドロイド沙耶のことを知る唯一の人間だったから、ダムに蓄えられた水が一気に下流へ放水され、落差を霧状に砕け落ちるかのように、保は鬱積した想いを中林へぶつけた。

「とにかく、沙耶の性能なんだ、中林! 分かるなっ!」

 中林は保の勢いに押されて口籠ごもった。

「あ、ああ! …よく分からんが?」

「よく分からんか。そりゃ、お前には分からんだろう」

「まったく、分からん。上手くいってないのか?」

「いや、その逆だ。完璧に上手くいってる」

「なら、いいじゃないか」

「それがよくない。完璧すぎる沙耶を俺一人で独占してるんだぜ!」

「そりゃ、そうだろう。お前が作ったんだから…」

「それでいいのか?」

「なにが? …まあ店先で立ち話もなんだ。中へ入れよ」

 中林にそう言われ、つい興奮して話している自分に気づき、保は我に帰った。


-104-

 中林に続いて保が店へ入ると、店主の馬飼まがいが奥で帳簿を付けていた。入ってきた保を見て、老眼鏡をずらして保を見ると、軽く頭を下げた。あっ! 危ういところだった! と保は感じた。うっかり声が聞こえればバレるところだった。馬飼は沙耶のことを、まったく知らない。部品調達は全て中林を通していたからで、よく買ってくれるお客だと思われているふしはあった。事実、馬飼は、よく見る顔だ…と、保を思っていた。それ以上のことは伏せてある。中林に山盛教授の助手ということは言わないよう頼んであった。沙耶のことに比べれば小さな秘密だが、知られないに越したことはない。保と中林は部品倉庫の方へ進んでいった。沙耶の補強は大部分がプログラムだが、新しい部材があれば組み込む余地はある…程度の思い出保はやってきたのだ。どうしても、確定した部品パーツが手に入れたい…という目的ではなかったし、中林に沙耶の話を聞いてもらいたかった、ということもある。

「補強するって、どうよ?」

「まあ、今より増しになりゃいいんだけどね」

「今じゃ駄目なのか?」

「いや、完璧なんだけどな。メンテナンスが数か月に一度とか・・、そんな実用的なパターンに出来ないかって話だ」

「メンテか…。今は10といちだったよな。一度、連れて来いよ。俺も見てみたいしさ。ははは…いっそうのこと、スーパーウーマンみたいに空飛ばしゃどうだ」

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