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魔法少女37歳〜今日もストゼロ飲んで頑張るぞっ  作者: 座山食空
帰ってきた魔法少女42歳 ピラティスの戦士
7/8

最終話 それがマジカルということ

空港ラウンジは、妙に静かだった。



よし子は、皿に取ったスモークサーモンをぼんやり見ていた。

その横には液体なのか個体なのかわからないチーズがよそわれている。



さっきまでシャンパンをがぶ飲みしていた妖精が突然叫んだ。


「マジカル王子のおなありいい!」


「うるせえ!」





よし子が小声で怒鳴った瞬間、目の前にマジカルミラーが強制展開された。


きらきらと光が舞う。



そして、あのときからきっちり五年分、歳を重ねたマジカル王子が現れた。



「よし子。今回は本当にありがとう」



王子は、少し疲れた顔で微笑んだ。



「魔王クラスが討伐されたおかげで、あと三百年は悪のウィッチ組合は大型魔獣を召喚できない。世界は、一旦救われた」



よし子は黙っていた。



「そして同時に、今回よし子にマジカルパワーを与えたマジカル特例の発生条件もなくなった。だから、よし子も今日で魔法少女ではなくなる」


ラウンジの照明が、やけに白かった。




「本当に、ありがとう」




王子は続けた。


「ねえ、よし子。人生は希望に溢れて始まる。嬉しいこと、楽しいこと、いろんな色があって、思い出を重ねていく。でも、やがて老いて、絶対的な絶望である死に至る。時間は戻らない」



よし子は、何も言えなかった。



「そして世界にある希望は、欲と自慢話と嘘に溢れている。君の救った世界は、虚しい世界なのかもしれない」




王子は少しだけ笑った。



「だけど、これからの人生で見続けてほしい。この世界を。僕たちには、そうすることしかできないんだ」



妖精も、珍しく黙っていた。



「嘘をついたり、自分をごまかしたりしながら、それでも抱きしめてほしい。この世界を」




王子はまっすぐ、よし子を見た。




「それが、マジカルということなんだ」




光が少しずつ弱くなっていく。


「ごめんね、引き留めて。あと、これ。気持ち。旦那さんと娘さんに、お土産でも」


王子は封筒を渡した。





中には、九十五ドル入っていた。




日本円で、約一万五千円だった。




「微妙!」


よし子が言うと、マジカルミラーは閉じた。



空港でI♡NEWYORKのTシャツを家族3人分買った。



マジカル王子のお土産代では足が出た。





「マジカル経費...」


『落ちません!』







帰国した。




成田空港は、ほのかに醤油の匂いがした。






あれから、しばらく経った。


夫が帰ってきた。




今はリビングで、娘と一緒に『マジピュア』を見ている。


「ねえパパ、ママもマジピュアなんだよ」


夫は少し驚いて、それから微笑んだ。


「そうなんだ」




「ねえママ、変身して!」



娘がこちらを向いて言う。



「変身してママ!」




娘が駆け寄ってくる。



どしっ。



よし子は、その小さな体を抱きしめた。



暖かくて、



そして、少しベタベタしていた。





「それが、マジカルということなんだ」



夫が笑っている。


娘がぐりぐりと頭をよし子のお腹にめり込ませている。




ベランダでは、乾いた洗濯物が風に揺れていた。

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