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復刻版 マジカル少女15歳  地球温暖化にはご用心♡

「行っくよー!」



青い空に、ビーチボールが舞い上がった。




市民プールは夏休みの匂いでいっぱいだった。塩素と焼けたコンクリートとセブンティーンアイスの匂い。


よし子はフリルのついたかわいい水着で、同級生の女の子たちと水をかけ合っていた。



「それにしても、今年の夏、暑すぎない?」




友達の美沙子が、プールサイドの方を指さした。




「見て、よし子。隣のクラスの市川くん」



そこには、すらっとした細マッチョの男子がいた。濡れた髪をかき上げる仕草が、なんかずるい。



「かっこいい……」



「知ってる? 市川くん、箏、弾けるらしいよ」



「箏?」



「そう。箏」



細マッチョで、箏。



それはもう、よくわからないけどかっこいい。




よし子がぼーっと市川くんを見つめていると、市川くんがこちらを向いた。



目が合った。



そして、市川くんが、手を振った。




「え、えええええええええええええ!」




その時だった。



びりっ。



耳の奥で、妖精の声がした。



「よし子、大変!」



「もう! こんな時に限って!」



よし子は急いで更衣室へ走った。



マジカルミラーが展開される。



鏡の向こうに、妖精が真剣な顔で浮かんでいた。



『渋谷の空が割れている』



「夏の空が?」




急いで埼京線で渋谷へ。




「割れているわ」



渋谷の駅前。人だかりの真ん中に、巨大な石像が立っていた。




顔だけの謎の石像。




1mくらいの大きさ。




そして、その口からリング状の光線を吐き出していた。




一秒に七個。




「なにあれ」



『あれは、昔イースター島を滅ぼしたという噂の温暖化モアイだよ』



「温暖化モアイ?」


「あのモアイを放っておくと、地球の年間平均気温が〇・〇二度上がるの。いずれ南極の氷が全部溶け、世界中が海に飲み込まれてしまうわ」



「それはほっとけない!」



よし子は立ち上がった。



「マジカルミラー展開! マジカルステッキ、セットアップ!」



きらきら星と、キャンディーと、ファンシーなクマのエフェクト。虹が飛び散り、フリルが回り、リボンが結ばれる。



変身完了。



マジカル少女よし子!




よし子はステッキを構えた。



「スター手裏剣!」



星形の光がモアイに向かって飛んでいく。




命中。



しかしモアイはこちらに気づいた。




『よし子、来るわ!』




モアイの口から、リング光線が放たれる。




「スター手裏剣!」



よし子はリングに向けて星を放った。



だが、間に合わない。




「ダメだわ! 向こうの方が早い!」



モアイは十秒間に七発のリング光線を撃ってくる。



こちらは十秒間に六発しかスター手裏剣を撃てない。



『よし子、あのリングに当たると、体温が〇・〇〇二度上がるわ!』



「そんな細かい数字、戦闘中に言われても!」



リングが、よし子に命中した。



さらに真夏の太陽が、じりじりとよし子を焼く。



「あつい……」



『よし子!』



「妖精、今日のマジカルアイテムお願い!」




『よし、マジカルアイテム!』



このままでは、よし子が熱中症になってしまう。



熱中症とは、日射病のことである。

体温が上がりすぎることによって、体が対応できなくなり、吐き気、高熱、逆に寒気など、さまざまな症状が出る。最悪の場合、死に至ることもある。

水分補給により症状が改善する場合がある。

皆さんも気をつけよう。


熱中症については、厚生労働省の特設ページを見てね♡


「いいから!」




『マジカルアイテム! マジカルスウェットとマジエリアス、どっちがいい?』



「どう違うのよ」


『味が微妙に...』


「どっちでもいいから早くちょうだい!」



よし子は、蛭子能収の漫画みたいに汗だくになっていた。




「ほら、よし子。マジカルスウェットだ!」




よし子は一気に飲んだ。




「ごくっ……温っ!」



『冷やしたジュースは体に悪いのよ♡』




「なんかイライラする!」



それでも、とにかく体温は下がったような気がした。



よし子はステッキを握り直す。



「マジカルスラッシュ!」



光の刃が飛ぶ。



スラッシュ一発で、リング三つを消すことができる。



スラッシュは十秒に三発撃てる。



つまり、十秒に0.666666…発分がモアイに当たる計算になる。


(式)1÷3x2 

   =0.666666

   


『前に授業で習ったやつだね』



「やかましい!」




「ぐぬぬ……」



10秒あたり約0.7発のマジカルスラッシュによろめくモアイ。



その時、地面が割れた。



温暖化モアイが、ずずずずず、と地中から這い上がってくる。



「顔だけじゃなかったの!?」




巨大な頭




細い体。



「あっ、細マッチョ」




「よし子、見とれてる場合じゃないわ!」




モアイが胸を反らせた。




「CO2ボンバー!」




巨大な熱風が襲いかかる。




「マジカルバリア!」




だが、防げない。




「きゃああああ!」




よし子は吹き飛ばされた。




もうダメだ。



楽しい夏休みが、地獄の夏休みになってしまう。



世界中が、海に飲み込まれてしまう。



やだ、そんなことはさせない!




ボロボロになりながら、よし子は立ち上がった。



『よし子……』



妖精が泣きそうな顔で言った。




よし子は決意する。



「あの技を使うしかないわ」



よし子はうなずいた。



ステッキを構え、目をつむる。



マジカル粒子が光り出す。



テーマ曲が流れる。



よし子はステッキを空へ掲げた。




「マジカル……しゅーと!」




まばゆい光が、一直線にモアイを貫いた。




「ギャアアアアア!」




温暖化モアイは爆発した。




渋谷の空の切れ目が、ゆっくりと閉じていく。





夏の青空が戻った。





数日後。




近所のロッテリアで、よし子は友達とポテトを食べていた。




「聞いてよし子。あの後、市川くんと美沙子、付き合うことになったんだって」




「え」




「あの時、手を振ってたの、美沙子にだったみたい」




「あれ、私を見てたんじゃなかったの……」




よし子はショックで、頭がくらくらした。




帰り道、よし子はふらふらで歩けなかった。




そこに妖精が現れる。




『よし子、大丈夫?』




「大丈夫じゃない……」




『はい、マジカルスウェット』




「熱射病じゃねーよ」





おしまい。


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