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魔法少女37歳〜今日もストゼロ飲んで頑張るぞっ  作者: 座山食空
帰ってきた魔法少女42歳 ピラティスの戦士
5/8

第二話 最近の若い子は...


翌朝。


よし子は娘を連れて夫のマンションへ向かった。


インターホンを押す。


夫が出てくる。


三日ぶりだった。


目の下に隈ができていた。


よし子も疲れていた。


夫も何か言いたそうだった。


よし子も何か言いたかった。


でも言わなかった。


娘だけが元気だった。


「パパー!」


夫が娘を抱き上げる。


少しだけ安心した顔になる。


その顔を見て、よし子の胸が少し痛んだ。


妖精が肩の上で小声で言う。


「いいパパそうだけど」


「今それ言う?」


「ごめん」


よし子は娘の頭を撫でた。


「夕方には帰るから」


「うん!」


娘は笑った。


夫と目は合わなかった。


合わさなかった。


よし子は振り返らず駅へ向かった。


 


二時間後。


新大阪行き新幹線。


グリーン車。


妖精が窓際ではしゃいでいる。


『うわー!グリーン車だ!』


「マジカル経費で」


『横暴!』


「領収書いる?」


『もちろん』


「夢がないな」


 


新大阪到着。


御堂筋線へ乗り換え。


心斎橋駅。


地上へ出る。


観光客。


外国人。


たこ焼き。


グリコ。


そして――


空。


「……は?」


よし子が立ち止まる。


空が割れていた。


本当に割れていた。


巨大な亀裂。


黒い裂け目。


その奥は宇宙でも異世界でもない。


もっと嫌な何か。


ぬるぬるしていた。


そこから。


タコの足が。


一本。


二本。


三本。


十本。


百本。


千本。


にょろにょろと這い出している。


道頓堀上空が完全に地獄だった。


「まずいな」


『まずいね』


「まずいなこれ」


『かなりまずい』


「出てきたら?」


妖精が答える。


「日本終わる♡」


「♡やめろ」


 


その時だった。


周囲に光が走る。


シュバッ。


シュバッ。


シュバッ。


次々と人影が現れる。


若い。


かわいい。


細い。


キラキラしている。


「えっ」


よし子は思わず言った。


「坂道グループ?」


違った。


現役マジカル少女だった。


五期生。


総勢五十人。


かわいい!


とにかく若い!


キラキラしている!


そしてなぜかみな帽子をかぶっている。



坂道グループはよし子を見つけて寄ってくる。


「レジェンドだ……」


「本物だ……」


「歴代最強……」


「生よし子……」


「写真いいですか?」


「後にしろ!」


後輩にちやほやされ悪い気はしない。


 


そして少女達が一斉に変身する。


マジカルミラー展開。


マジカルステッキセットアップ。


 


令和エフェクト。


かっこいい。


スタイリッシュ。


映像が美しい。


なんか映画みたい。


 


音楽も凄い。


YOASOBIっぽい。


Adoっぽい。


よし子はカラオケで歌える気がしない。


早すぎるし、意味の分からないところで急に変調する。


 


衣装も進化していた。


スカート短くない。


露出少ない。


動きやすそう。


 


ハーフパンツの子までいる。


「時代だなぁ」


よし子は感心した。


 


そして。


帽子が取れた。


 


「……」


 


「……」


 


「……」


 


全員。


尼だった。


 


完全に。


尼だった。


 


つるつるだった。


 


「えっ」


 


「えっ」


 


「えっ」


 


異様な光景だった。


 


心斎橋。


観光客。


道頓堀。


空の裂け目。


巨大タコ。


 


そして。


五十人の魔法尼。


 


地獄絵図だった。


 


「本当に抜けるんだ……」


 


「はい」


 


「全員?」


 


「全員です」


 


「ごめん」


 


「いいんです」


 


「よくないだろ」


 


少女達は遠い目をしていた。


 


妖精が叫ぶ。


「来るよ!」


 


空の裂け目から。


巨大な目玉が開く。


 


タコの本体だった。


 


でかい。


 


とにかくでかい。


 


大阪城よりでかい。


 


「はい無理ー!」


 


よし子が叫ぶ。


 


妖精が叫ぶ。


 


「よし子!」


 


「はいはい!」


 


「お願いします!」


 


「結局私か!」


 


よし子はため息をついた。


 



マジカルステッキセットアップ。


 


虹。


 


星。


 


ファンシーな熊。


 


熊。


 


熊。


 


「5年前より多くないか、お前ら!」


 


平成初期エフェクトが爆発する。


 


令和チームがざわつく。


 


「エフェクト量おかしくない?」


 


「予算の使い方が違う」


 


「熊多くない?」


 


「熊多い」


 


 


よし子は空を見上げた。


 


そして。


 


「マジカルシュート」


 


放つ。


 


ドォォォォォン!!


 


放つ。


 


ドォォォォォン!!


 


放つ。


 


ドォォォォォン!!


 


放つ。


 


ドォォォォォン!!


 


放つ。


 


ドォォォォォン!!


 


放つ。


 


ドォォォォォン!!


 


三時間続いた。ひとりで3500匹の巨大タコを討伐した。


 


「はぁ……」


 


「はぁ……」


 


「はぁ……」


 


よし子は疲れていた。


 


肩も痛い。


 


腰も少し痛い。


 


四十二歳だった。


 


「終わった?」


 


妖精が双眼鏡を覗く。


 


「終わった♡」


 


「だから♡やめろ」


 


空の裂け目は閉じていた。


 


タコも消えた。


 


大阪は救われた。


 


観光客は普通にたこ焼きを食べていた。


 


誰も気付いていない。


 


それが魔法少女の仕事だった。


 


その時。


 


現役マジカル少女達が集まってくる。


 


みんな目を輝かせていた。


 


「凄かったです!」


 


「三時間休まず……」


 


「髪も抜けないなんて……」


 


「伝説は本当だったんですね!」


 


「握手してください!」


 


「写真も!」


 


「サインも!」


 


よし子は少し照れた。


 


悪い気はしなかった。


 


むしろ結構気分が良かった。


 


ただ、全然手伝わず、50人3時間ぼーっとしていた。何なら携帯いじってたやつまでいた。



「まったく、最近の子は....」



妖精がくすっと笑った。

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