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風任せで人任せな俺がここにいる理由  作者: 明月 文


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074 人を呪わば穴二つ

 俺の別れの言葉に彼女は返事はせず、俺が立ち上がるのも止めもしなかった。

 ただ俺が立ち上がって出口に向かうのを黙って見ていた。ウェイター達、配下を嗾けたりもしない。


 異変が起きたのは出口の扉に手をかけた時だった。

 俺の周囲を15本の光る輪が取り囲むんだ。


 よく見ると1本、1本の輪は二重螺旋になっており、細かな紋様が刻まれている。それらは俺を上から下まで取り囲みクルクルと回転している。


 俺がそれを眺めていると背後から彼女は嬉しそうに声を掛けてきた。


「なんでアタシがわざわざアンタに会いに来たか不思議だったんじゃない?」

「勇者に関する知識が欲しかったんだろ?」


 俺から返事があって彼女は嬉しそうに頷いた。


「それも全部ね。アンタがさっき話してくれた程度の話じゃなくて全部。けど3人ともいなくなってもうムリと諦めていたところにアンタが来てくれたのよ。」


 彼女は醜くニイっと笑った。


「アタシがこの手で隅々まで、アンタ自身が知らないところまで丁寧に調べて上げてあげるわ。」


 実はこの村に来たはいいが、彼女が会ってくれるかどうかは微妙な感じだなとは思っていた。

 復讐を恐れて、俺が来た、と分かった瞬間に自分は安全な場所に逃げ込んで手下達が襲い掛かって来る、という展開も当然想定していた。だからこそ結果的にはいらぬ用心ではあったけど、囚人を集めている、と聞いた瞬間にわざわざフィフスウェルまで戻って面子と人数を確認したのだ。

 そこまでしなくても相手は国から任命された領主だから、ただ惚けて会わないというのだって考えられる。


 しかし一方で俺が行けば彼女は自分から会いに来るかも知れない、とも思っていた。

 こちらが聞きたい話があるのと同様に、向こうも欲しい情報がある場合だ。

 その場合、自分をエサにしてでも手に入れるべく、俺の前に自ら姿を現す。


 そのレニが欲しい情報とは何か?

 それは魔法の研究をしているという事前情報から考えれば俺ら勇者の魔法情報だろう、と当たりは付けていた。


 で、あるならば最終的には俺の殺害ではなく生け捕りの機会を狙って来るのも予想の範囲内だ。

 シイちゃん専属に近かったレニは俺の魔法情報はあの3年間でも殆ど解析出来ていないだろう。


 ただ、どのタイミングで仕掛けて来るかは流石に読み切れなかった。


 そして予想は出来ていても、護衛らしき物体は真っ先に片付け、契約魔法を躱し、魔法陣も見破っても、仕掛けて来るのを防ぐには足りなかった、というわけだ。


「アタシは元々、大学で魔王を生け捕りにする研究のチームにいたの。」


 俺が体ごと振り向くと、彼女は周囲に光の輪が廻る俺の様子を薄ら笑いで見ながら、椅子に悠然とした姿勢で腰掛け直した。

 偉い人が下々を見下す座り方でドカンと腰掛ける彼女の前にはウェイトレスがワインのグラスをコトっと置き、入れ替わりに来た例のウェイター氏が赤ワインを注いでススッと礼儀正しく斜め後ろに下がった。ショートからセカンドへ、セカンドからファーストへ、という感じの動きだ。


「結局、色んな事情があって辞めて騎士団に入ったんだけど、本当はアタシは続けたかった。」


 彼女は見事なダブルプレーにも当然という態度でワインに口を付けた。


「なんで魔王を生け捕りなんだ?」


 俺の問いに彼女は「ナニ言ってんのよ?」とばかりに薄く笑った。


「魔王は最も強力な魔獣よ?飼い慣らせたら色々使い道があると思わない?」


 まあ、向こうの世界にも特に使い道は決めてなかったけど、より大きな力を見たいというだけで原爆、水爆の研究に勤しんだヤツもいたしな。

 アタマがいいだけで、脳内で人間を人間にしている部分には一滴の血も巡ってなかった水爆の科学者の事を考えれば、レニの考えている話は理解は出来る。

 オッパイだかワッペンだかって原爆学者が自分が作った原爆が人の上で爆発するとどうなるか想像だにせず、水爆学者がアラスカには住民がいると考えず核実験に丁度いいと思ったのと同様に、彼女は俺も魔王と同じく希少な実験体だとしか考えていないというだけだ。


「それがコレか?」

「そう。でも魔王を抑え込むにはまだ完全とは言えないわ。30人もの囚人を人柱に使って魔素を吸い上げてもまだ完全じゃない。でもアンタ程度なら抑えこめる。中から魔法で破ろうとしても無駄。得意の”れえざあ”も撃ってみてもいいけど中で反射するだけよ。」


 魔法技術という意味では素直に感心した俺は肩を軽く竦めた。


「へえ?」

「如何にアンタでも魔王より強力な魔力を持ってるはずはないし、30人分の魔法縛鎖は千切れないでしょ。」


 俺は周囲を見た。


 彼女が俺らと会う前から研究していたとすれば30年以上の研究成果だ。見事なものだ。

 同時にアイーシャ達が彼女の魔法に最後まで言及しなかった、彼女も魔王戦ですら魔法を使わなかった意味も何となく分かった。彼女の魔法は俺らに対する切札だったのだろう。


 裏切ったとかも何もなく、最初からOne Teamでは無かった具体的な証拠を改めて見せられて、そしてこれから起きる事を想像し、俺は暗い気持ちで溜息をついた。


「そうかもな。」


 俺の溜息交じりの返事を聞いて彼女は勝ちを確信して満足げに踏ん反り返り、ワインを味わうように飲んだ。

 今の彼女にとっては文字通り勝利の美酒だろう。


「最後の最後で油断する。アタシからすればアンタなんかまだまだコゾーなのよ。理解出来た?」

「まあな。俺はまだ20代だからな。60のババアからすりゃピチピチのワカゾーなのは間違いねえな。」


 俺の減らず口に彼女は一瞬顔色を変えた。

 しかし自分の勝ちは揺るがない情勢を思い出して直ぐに平静になり、その顔には「もう減らず口叩くぐらいしか出来ないでしょ(笑)」とばかりに嘲笑が浮かんだ。


「アンタ、最初から俺は20代、俺は20代ってムカつくしウザいのよ!だいたい何でアンタ、そんなに若いのかそれも喋って貰うわよ!」


 俺は彼女が醜悪な表情で喚き散らすのを見て、昔の美人だった彼女を思い出し、月日の過ぎる残酷さを感じた。

 昔は持って生まれた輝かしい才能と美貌で覆い隠せていた心の醜さが、この歳になると隠せなくなっているのだ。


 そして…俺の脳内で、在りし日の素早く精密機械の様な美しさで戦う彼女の思い出が壊れていく事が少し哀しかった。


 けど、彼女の遊びに付き合う、というか付き合えるのはこの辺までだ。

 なんのことはない時間切れだ。


 俺は一瞬だけ目を瞑って、彼女と時には笑顔で旅をした記憶にさよならした。

 そして彼女に告げた。


「けど言ったろ。人を呪わば穴二つって。」


 俺の周囲の螺旋の光はゆっくり回転を止めた。


「?…なに?」


 螺旋は紐が解ける様に崩れ、15本が1本となる。そして紐はすうっと上に上がってレニの方に向かい、そのまま一瞬で吸い込まれた。レニが逃げる間も抵抗する間もなかった。


 彼女は先程の余裕な様子は一瞬で消え去り、ワイングラスを乱暴に置いて立ち上がって怒鳴った。


「何をしたの!」


 思わず疑問を口にはしてしまったものの、優秀な魔法使いである彼女は直接的に何をされたのかは直ぐに自己解決して答えを出した。

 自己解決した彼女は今度は力が抜けた様に椅子に座り込んだ。


「……呪術ね。先の動作と言葉は呪詛だったのね?」


 呪術は学術的に大きく括れば最初にレニが使おうとした契約魔法の一種だ。

 内容は大きく分類すれば2種類ある。悪い神やら悪魔やらに願いを聞き届けさせるものと対人専門で相手に何事か働きかけるものだ。


 前者は相手がある事なので見返りが要求される。自身の魂かも知れず、新鮮な生贄かも知れない。

 後者には見返りは不要だが、相手が何かこちらの思う、願う行動をとる必要がある。ややもするとそちらの方へ間接的に働きかける必要がある。


 いずれの場合でも呪術の特徴は相手に直ぐに、直接は何かは出来ない。

 相手に何かしてくれる存在を呼び出すか、相手に何事か(悪い事が)起きるのを祈り、願い、しかも相手の行動をトリガーにする必要がある。


 俺は頷いた。


「アンタには昔、世話になった。アンタが何もしなきゃ、訊きたい話だけ聞いたら俺としちゃその恩に免じて何もせずに帰る気だったんだけどな。」


 俺は誰が何と言おうが、クソッタレ揃いのコッチの世界の住民じゃない。

 本当に俺は何もなければ何もせず帰る気だった。呪術はあくまで保険のつもりだった。

 

 けど哀しい事にそうはならなかった。


 そして呪術のもう1つの特徴。それは一旦かかれば逃れる術はない、という事だ。


「まあ30人分だったか?そのパワーを自分で感じて楽しんでくれ。」


 が、彼女は苦しみもしなければ、目が見えなくなったり言葉が発せられなくなったりもしない。

 彼女はちょっと恐る恐る手足を少し動かしてみたが何も不自由な所はない。千切れたり溶けたりもしない。

 彼女は「…何が起きるの?」と若干不思議そうな顔をしている。


「お前さんも良く知ってるとは思うけど、俺らも大概、騙され続けて旅をしてて、いい加減アタマに来ててな。マサさんとシイちゃんの2人が対人専門の魔法を開発したんだ。それがコレさ。」


 俺達は試練の迷宮の迷宮の通称図書室で各々の力を手に入れた。そこでのルールは同じ本は他人は読めない、だ。


 だが、旅をしている最中に俺達は考えた。


 確かに同じ本はあの場では読めなかったし、2冊手に取っても最初の1冊しか読めなかった。

 だから俺らはあの図書室で得た力しか手に入れられないと思い込んでいたけど、実は他にやり方はあるのではないか?


 あの場で2冊の本が読めないのは、あの場での本を使ったお手軽技能習得の話をしているだけで、本を使わない技能習得に縛りはあるのか?

 それに、そもそも「本が2冊読めない=2つの技術を習得出来ない」なのか?


 この仮説を検証するにあたり、俺らは更に仮説を立てた。

 例え「本が2冊読めない=2つの技術を習得出来ない」であってもそれを潜る方法、それは「あの図書室には無かった技術は入手可能ではないのか?」だ。


 無論、俺らがあの図書室にあった技術として分かるのは俺ら14人が手にした力だけだ。何があの場には無かったかなど分からない。


 そうなると後は総当たりしか手は残らない。

 俺達はコソコソと地道に旅の途中で見知った技術を試し続けた。その結果、辿り着いた1つが呪術だ。


 その呪術だが残念ながらその特徴から効果が直ぐに出るわけではなく、戦闘には全く役に立たない。

 けど、騙されて使い倒され続けた俺らがウサ晴らしするぐらいには役にたつ。


 が、レニにはそんな事はどうでもいいらしい。

 彼女は俺の説明など聞き流して喚いた。


「……ナニ?ナニをされたのアタシ?」

「俺の故郷にかつてあった古い国では最高刑は死刑じゃなかった。何だと思う?」

「……」

「忘却刑、というヤツさ。」


 Damnatio Memoriaeは正確には生きている人間に適用されるわけじゃなかったけどな。

 ま、そこらの学術的な正誤は今はあまり重要ではない。


「??ボーキャクケイ???」


 レニは混乱した様子だった。

 そんな彼女の様子に構うことなく俺は勝手に説明を続ける。


「これを宣告されると宣告されたヤツは一族から外され、記録は全て消される。」

「…?」

「彫像は全て壊され、ソイツの事績は全ての歴史書から消され、ソイツの登場するレリーフからはソイツの部分だけ削られる。墓も無くなるか墓名は削り取られる。ソイツは最初からこの世にいなかった事にされるのさ。」

「……??」


 魔法の研究者であるレニはアタマが悪い方ではないだろう。けど俺の言う事が上手く理解出来ないらしい。

「それがなんなの?」という表情だ。


「アンタに関する情報はこの世から消え去った。」

「……」

「この世からアンタに関する記録は全て消滅する。まあ、時間差やら個人差やらはあるだろうが、他人のアタマからもアンタに関する全ては消えて無くなる。誰かに何かを喋ろうにもアンタ誰だ?ってな話から始まるからアンタの話を聞くヤツはいねえし、知らんアンタの命令を聞くヤツもいねえ。」


 段々話が分かってきて彼女は顔を蒼褪めさせた。

 が、顔色は元には戻らなかったものの、直ぐに小馬鹿にした様な表情になって敢えて強気に笑った。


「そんな事、ある?」


 その時、彼女の斜め後ろに控えていたウェイター氏が彼女の横まで来て言った。


「お客様、いらっしゃいませ。」


 ウェイターに声を掛けられて驚きで目を見開いた彼女の前に既にワインが置いてあるのを見て、自分の手にワインがあるのを見て、ウェイター氏は見た目だけは上品に苦笑いした。


「……失礼しました、もうワインを頼まれていたのですね。私としたことが失念しておりました。オーダー表をお持ち致しましょうか?」

「……」

「今日の魚のコースは鱒、肉はこの辺りでは珍しいゲール羊でございます。」


 今度は俺が彼女を小馬鹿にしてせせら笑って言った。


「お前さんのかけた洗脳自体は解けない。けどお前さんを覚えているヤツはいなくなる。」


 俺の声にウェイター氏は今度は俺の方を向いた。


「失礼ですがお帰りでしょうか?」

「まあな。」


 彼は何かを思い出そうとするかの如く、軽く首を傾げた。


「実は…私共の村の村長が…その…珍しいCクラスの冒険者が来られたなら是非お会いしたいと申しております。村長がお越しに…?…ああ…来るまで少々……?……待って貰えないかねえ?」


 最後に口調が崩れたのを聞いて、再びレニがビックリした表情をする。

 俺も少し驚いたが、直ぐに状況が分かった。


「なるほど。記憶からお前さんが消えたから、お前さんが重要な存在な洗脳内容が解けはしないけど壊れてきつつあるのか。」


 俺はウェイター氏の方に視線を戻して言った。


「もう村長には会った。お互い用事も済んだ。」


 ウェイター氏、ここでは何と言う名乗りになってるかは知らんけど本名はバリー・ハンフッドという前科10犯以上の犯罪者だ。

 上辺だけは柔らかい物腰と整ったナイスミドルな風貌を武器にした詐欺の常習犯である彼は、サウザンリーフ公の言うところの法律的には死刑にはならないが、シャバに放してはならない社会不適格者としてここへ送り込まれて来ている。


 ちなみに首に入れ墨のあった門番のザック・ジューさんことアッカード・ジョージアさんも前科3犯の殺人犯だ。

 10代から何度もお上のご厄介になっている彼は、裁判では毎回上手に相手の非を鳴らして死刑こそ免れてきたが、やはりム所では更生の見込みゼロと見做されていた。


 2人ともム所から次の連中が送り込まれて来たら、今、村の周囲の結界やら他の魔法研究の核として人柱になっている累積犯罪者と交代で人柱にされるのだろう。


 ちなみにウェイトレスはホムンクルスだ。

 彼女は存在の中心であったレニが記憶から消えたが、目の前に生きているという相反する情報を前に、その存在を消滅させる事も出来ずに起動停止して立ち竦んでいる。


 今はウェイターのハンフッド氏は、次の囚人が来るかレニに役に立たないと判断されれば魔力抽出用の人柱送りという自分に待ち受けていた運命など当然知らず、俺の返事につまらなそうにハナを鳴らした。


「ふん、そうかい!んなら、いつまでも店の入り口でウロウロしてんじゃねえよ。邪魔なんだよ!とっとと逝っちまいな!」

「ああ、そうするよ。」


 俺がサッサと立ち去ろうとするのを見てレニが立ち上がって怒鳴った。


「ちょっと待ちなさいよ!」


 しかしその声に反応したのは俺じゃなくてウェイター氏だ。


「お客さん、店で騒がねえでくんな。アンタは知らんかも知れんけど、ここはカクシキの高い店ってことで村長から言われて……ん、村長って??……んん?…ん~まあ、よく覚えてねえけどそういうこった。だから静かにしてくんな。」


 他ならぬ部下、しかもシイちゃん譲りの魔法で完全に洗脳済みだったはずの部下に文句を言われ、レニは喚いた。


「アンタ、さっきから正気!?村長はアタシよ!」


 しかしウェイター氏は些かも動じない。


「んなわけねえだろ!アンタ、ちょっとアタマおかしいのか?村長だったら俺もよく……まあ顔はよく浮かばねえけどアンタじゃねえのは確かだ。アンタも変な事言って騒いでねえで、ココはメシ屋なんだから酒だけじゃなくて何か頼んだらどうだい?」


 俺が彼らを無視して立ち去ろうとすると彼女は喚いた。


「話は終わってない!待ちなさいよ!」


 俺が肩越しに振り向いて足を止めると彼女は更に喚き散らした。


「話がおかしいじゃない!この世からアタシの記憶が消えたなら、何でアンタはアタシが分かるの!?」


 彼女の問いに俺は端的に答えた。


「そりゃオマエ、これは呪術だからさ。」

「!!……」


 アタマのいい彼女は俺の言わんとする意味が直ぐに分かったのだろう。絶句して押し黙った。


「コレは呪術なんだ。俺がお前を呪ってるんだよ。肝心の俺がお前を忘れたら、オタついてるお前を見て嗤う事も出来ないじゃないか!(笑)」


 彼女の手が一瞬だけ動き、しかし力なく落ちた。

 魔法を唱えようとしたが、意味がないと見て諦めたのだ。


 魔法の専門家である彼女は呪術も理解している。

 彼女が俺に攻撃を加えれば、攻撃した分だけ自分に更なる呪いが上乗せされるだけなのを知っているのだ。


「何でもいいけど、ここじゃ喧嘩はお断りだ。田舎のクソ冒険者向けの飲み屋じゃねえ。村長から”カクシキ”の高い店を目指せって言われてんだ!」


 命じられた上品な話し方が、命令者の記憶が消し飛んだ事でもう完全に崩れつつあるウェイターが再度介入し、話すべき事は話した俺はもう彼には取り合わず再度扉に手を掛けた。


「…アンタ、いい加減にしないと殺すわよ?」

「殺す?いいぜ、おもしれえ!やってみな!」


バタン


 ウェイター氏とレニが怒鳴り合うのを背に俺は店の扉を閉めた。



 取り敢えず近場のキッサーラに引き揚げる道中、俺はレニとの会話を反芻していた。


 王太后の命令で3年間、俺らを解析し続けて終われば処分する機会を狙っていた彼女達と、彼女達に最後まで持ち技を隠し通した俺ら。

 最初からOne Teamではなく、それどころかOne Teamになる気もなかったわけで、それは彼女達だけを責める話ではない。俺らもまた一緒だ。


「人を呪わば穴二つ、か…」


 正に俺がかけた呪いの文句そのままに、俺達も彼女達も互いを最初から最後まで信じられなかった事が結局はこういう結果になったのかも知れない。


 今頃になってそんな虚しい結論に思い至り、俺は1人首を振った。


 今更反省したって仕方がない。

 それでも生き残った俺は、どんな理由かも分からず得た能力と彼女達に鍛えられた技で生きていくだけだ。


 風の赴くままに。


 このレニの村に来てからの話は最初は勢いで書いたものの、なかなか思った様にならず、添削を繰り返しました。

 最後は少し長くなりましたが、途中で分ける事無く一気に最後までいくべきと考え、そのままにしております。

 次回からはリバードアに戻って、風任せ人任せで新たな話に突入します。


 読者の皆様のブクマなり評価なりの力強い後押しが、作者にとってはこれからも続ける大きな大きな励みになります。


 本作を気に入られた方、今後も読み続けて戴けるつもりがある方は「読んでるよ」という印代わりにお気軽に、そして積極的に(!)ブクマ、評価、そして感想をお願いします。

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